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した為に、場所をより広い、ふれあいセンターのコミュニティーホールに移し、行政関係者も出席しやすい様に便宜を図り、積極的に参画を促して来た(図9)。私は各地域毎に。この様な自由意志により多職種の人々が定期的に一堂に集い、平等の立場で地域内に存在する諸問題を討論出来る場を設けて行く事こそ、これからの超高齢社会を迎え、乗り切って行ける"地域作り"には最も肝要な事ではなかろうかと考えている。一人よがりの押しつけのケアや、地域特性を無視した地域作りを防ぐ為にも衆知を結集してより良く住み易い地域作りへの幅広い提案と気付きの場を提供する事が意義深い事ではないかと思われる。

IV.おわりに

私達は過去13年間にわたって病院から出て行く医療を提供して来た。そして、その結果一医療機関からのみの係わりでは地域内の在宅療養希望者を支えて行く事は不充分かつ不適当であるとの判断に達した。そして、当地域内に存在する唯一の公立病院として超高齢社会に対応して行ける地域作りを目指して、保健所や市役所、並びに各医療機関に呼ぴかけて当地域内のシステム作りに参画して来た。

特に平成6年4月に市に開設された保健福祉総合会館の運営に関しては当初から定期的に関与し、デイサービス事業を支援し、利用者の安全と便宜を図って来た。そして平成7年4月からセンターに併設された在宅介護支援センター事業にはやはり当初より積極的な支援を行い、夜間、土曜日曜日祝祭日等、すべての時間外の業務は国保病院が窓ロに成り、1日24時間、1年365日の年中無休の体制を可能として来た。そして1年間の相談内容の実績を元に、在宅介護支援センター内にヘルパー組織を組み込み、両組織が一体と成って機能する様提案して来た。そしてそれを受けて平成8年4月からは支援センター内にへルパー組織が融合された為、住民からの相談に即ヘルパーが対応というシステムが出来上がった。

そして平成8年6月かは"ふれあい訪問看護ステーション"が国保病院に併設と成った為、支援センターとの機能の連携を図る事により、本来目指した形での支援センター機能の充実を図って行く事が出来るものと確信している。現在では支援センターと訪問看護ステーションはお互いの設置場所は離れているが、しかし毎週必ずー回は合同会議を開いており、尚且つ医療ニーズの高い住民の相談には両者は共同訪問を行っており、機能的には既に一体と成って活動をしている。この様に地域のコーディネーター的役割を演じるふれあい介護支援センターが機能面で充実し、住民からは元より、各医療機関や福祉施設からも真に評価される様に成った時に、初めて極く自然にこの地域の包括ケアシステムが築き上げられるものと思われる。

そして当地域は既述の様にケアワーカーの集いが開催されている為多職種の人々のコミュニケーションが良好に図られており、各組織間の壁が下からの動きで取り除かれつつある為、地域のケアシステムの土台がより堅固であり、近い将来には地域住民のニーズに基づいたより多くの社会資源が加えられ、地域の住民が真に豊かさを感じられる地域作りが成されるものと期待している。この様にこれからの高齢社会を乗り切れる地域作りはその地域の多職種の人々が、相互の垣根を取り除き、お互いの専門職種の立場に立った主張をし合い、お互いの立場を尊重しつつ共通の課題を解決して行く様な地域社会のコンセンサス作りが為されて行かなければならないものと思われる。特に私達医療者は、老後の幸せの基礎である健康と、不幸な寝たきりを無くす街作りのアドバイサーとしての役割分担を担った上で、他職種の人々へ専門職種の立場に立った多くの気付きを与えて行かなければならないのではなかろうか?医療職にある人が正しい主張をして行かない限り真に健康で幸せな老後を過ごせる街作りは出来ないのではないかと思われる。私はこれからも医療者の一人として積極的に発言し、益々過疎化、高齢化の進んで行くこの安房地域における地域包括医療体制の実現を目指して微力ながらその一端を担って行きたいと考えている。

(鴨川市立国保病院 〒296-01 千葉県鴨川市宮山233)

 

 

 

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