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小さいことを考慮すると、それらの数字がいかに比較に耐えうるものであるかがお分かりいただけるでしょう。
オーストラリアは、人口がわずか1,800万人、国内総生産は3,550億ドルという国ですが、今年の観光による外貨収入は140億ドルに達しました。これは、私の計算が正しければ1兆2,460億円に相当し、旅行産業はわが国の総外貨収入の13%、そして昨年のサービス輸出の伸びの70%を占める、最大の外貨収入源ということになります。日本においては、オーストラリアは原材料、あるいはエネルギーの輸出国として知られております。しかし、観光産業は石炭や金や原油に代わるものとして、その2倍の輸出額にのぼっております。わが国の観光産業の成功は、国際的にも認知されております。昨年の10月にクリントン米大統領が主催された「ホワイトハウス旅行観光サミット」では、当局ATCが世界最高の観光振興機関として表彰され、私も大変光栄に思っております。
また、当局は民間企業とのマーケティング活動といった点からも、成功例として他国の注目を集めており、カナダの政府は当局の形式を基に、昨年カナダ政府観光局を設立しました。このように、オーストラリアやカナダやその他の国がこういう観光振興機関というものを政府機関としてつくらなければならないのは、現在、世界観光産業が非常に厳しい競争にさらされているからです。
-(南アフリカのプリント広告)-
昨年、世界中で旅行地を宣伝するのに費やされた広告費は20億ドル、日本円にして、1兆7,800億円に及びました。これは、南アフリカがどのようにマーケティングをしているかという一例です。オーストラリアヘの観光が実際に顕著に伸びてきたのは、政府が世界に向けて打ち出す広告の包括を当局に委託し、出資することを決定した1980年代以降です。この広告はATCのほうでつくっております。
-(スライド)-
オーストラリアが政府の観光促進機関を必要としていたいくつかの理由として、オーストラリアがほとんどの市場から遠く離れており、国際的な知名度が低かったこと、また当時は観光業界がまだ未熟であったことなどが挙げられます。また、アメリカがハリウッドを使ってその魅力を世界に知らしめましたが、オーストラリアにはそのように強力な、知名度を高める、その国独自のものに欠けていたのです。世界に知られた、例えばシャネルのようなブランドもありませんでした。あるいはイギリスのロイヤル・ファミリーのように「呼びもの」というようなものもありませんでした。その結果、オーストラリアの認知度は、現在でもまだ比較的弱いものです。
キーティング前豪首相の言葉を引用すれば、われわれは他の国よりも努力しなければならなかったのです。しかし、孤立は結果としてわれわれにとって最大の財産をもたらしました。それは、オーストラリアのすばらしい自然環境でした。そして観光産業のマーケティングに着眼し、われわれ独自のやり方を開発し、好成績を築いてまいりました。これは、日本の皆様にもご参考にしていただけることの一つではないかと思います。
オーストラリアの連邦政府は、初期から観光産業というものの非常に大きな価値を認識しておりました。80年代初期ではオーストラリアは、消費者に直接アピールしなければならないと考えました。それは消費者に、距離、旅行時間、費用といったマイナス面を克服するほどの興味を抱かせ、行きたいと思わせることなのです。観光客は、自分が認める価値に対してお金を払います。ですから、価値があると思うものには快くお金を払うということです。
オーストラリアは他の国に比べて、行くだけでお金がかかります。そこで、旅行者がオーストラリアで休暇を過ごすことにより高い価値を見つけてもらわなければなりません。それに対してプレミアムを払おうという気持ちになってもらわなければならないわけです。そこで、われわれとしては戦略をたてなければなりませんでした。例えば、テレビや高級出版物というようなものを使って広告をしようという戦略をたてたわけです。わずか30秒のTVコマーシャルでは、他の競合を相手にオーストラリア独自の位置づけが不可欠であると認識し、単に違いを見せるだけではなく、何がすばらしいのかを訴え、そして今年は広告で休暇中の人々を見せることで、消費者の参加や関わりといったものを表現したわけです。成功要因の一つとして、オーストラリアのもつすばらしい自然環境、色や光を美しく視覚に訴えられたことが挙げられるでしょう。
最近のわれわれの戦略は、大変高度な分析の基に立てられています。われわれが年を費やした世界的に施行されたキャンペーンでは、消費者や競合の動向や各主要市場でのオーストラリアの観光

 

 

 

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