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アメリカ州法人所得税における他州法人課税
大阪学院大学経済学部教授 前田高志
1 他州法人に対する州法人所得税の課税
アメリカ連邦制下では個々の州がそれぞれ課税権を有し、現在、44州とコロンビア特別区が法人所得税の課税を行っている。州法人所得税の州歳入に占める割合や、課税べース、税率などは州によって異なり、負担水準にも州間格差が存在する。州が課税権を有し、州レベルで多様な法人所得課税が行われることはいくつかの問題を生じさせるが、その一つに他州法人に対する課税問題がある。多くの法人は複数の州において事業を行う多州籍企業であるが、自州内における他州法人の所得に対してどのように課税するかの基準が州によって異なれば、課税の公正が損なわれ、企業活動に非中立的な影響が及ぶことになる。
そこで州の課税権は、まず1959年の連邦最高裁判決を受けて制定された州際所得法によって次のように制限される。
? いかなる州、自治体も同州内において、その従業員または独立の代理人により勧誘活動のみを行い、すべての注文が州外に所在する事業所において承認され、かつ、その販売する物品が州外より搬入されるような事業活動を行っている者に対する課税権を有さない。(Sec.101(a))
? 上記の規定に関係なく、州、自治体は、自州の法律によって設立された法人および州内に居住する個人に課税することができる。(S?.101(b))
すなわち、州は州法人(自州の会社法により設立)および、自州内で事業活動を行っている他州法人(他州の会社法により設立)に課税する権限を有する。そして、複数の州に事業所を有し、事業活動を行っている多州籍法人の場合、その全所得が事業活動を行っている州に配分されることになる。

 

2 事業活動の定義
他州法人であっても自州内において事業活動を行っていれば、その州の課税権が及ぶということになれば、まず事業活動そのものの定義が重要な問題となる。A州においてB州の法人が事業活動を行っているかどうかの判断基準は、当該法人がA州に営業登録をしているような明確な場合を除いて、州によって異なる。そこで、アメリカ法曹協会は事業活動の定義をある程度、統一するため次のような基準を設けている。(注1)

 

下記の行為を州内で行っているということのみでは、他州法人が自州で事業活動を行っていることにはならない。
? 訴訟の原告または被告として、公判を維持・管理している。
? 株主総会、取締役会を開催する。

 

 

 

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