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が可能となった。
法人市町村民税及び法人事業税についても法人道府県民税の法人税割と同様の繰越控除と還付の仕組みを創設している(法人市町村民税:地方税法第321条の8第11〜15項、法人事業税:地方税法第72条の23の4)。
ただし、法人住民税においては利子割控除の制度がなく、また法人事業税においては、外国税額控除制度及び利子割控除制度がないためこれらに関する制度が抜けている点、法人道府県民税の制度と異なっている。
なお、これらの特例は住民税においても事業税においても法人にかかる制度として規定されており、個人については制度化を行っていない。
これは、移転価格税制が企業の国際的経済活動の活発化に伴い、国境を越えて所得が移転し、それによる各国の税収に影響を生ずることを防止する観点から各国で導入されてきたものであること、この特例は納税義務者に一定の制約をお願いし、地方団体の財政運営に与える影響を緩和するための措置であり、その適用範囲は限定することが適当であると考えられることなどの理由による。
2 特例措置による調整
国際関係が進展するに伴って、地方団体と国際社会のかかわりも増大し、地方税についても外国人や外国企業の課税問題、また外国の公的機関、国際機関及びそこに働く職員等に婦属する地方税の課税問題等について、いかに調整するかといったことは地方税法をみるだけでは解決しない問題を含んでいる。
このような国際関係における地方税の課税関係を調整する根拠となっている租税条約等について、二国間租税条約及び外交関係等に分けて整理する。
(1)二国間等租税条約
租税条約は国家間の約束であり、その中心は国税であるが、一国の税制は地方税を含めて一つの体系をなしており、国際間の租税の調整は地方税を含めて考えなければ完全でないことから、租税条約は多くの場合、地方税をも対象としている。
ア 租税条約の必要性
租税条約は、原則的には、国際間の人的・経済的交流に伴って生じる国際間の二重課税を排除し、国際的な諸活動に対する「税の障害」を除去することを本来の目的としている。
一般に、二重課税の生じるケースとしては、
a 納税者がその国に住所(又は本店)を有するというような事情により、属人的管轄権に基づいて課せられる租税債務と、所得がその国で発生したという理由により、属地的管轄権に基づいて課せられる租税債務が競合する場合

 

 

 

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