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年に「神戸市民の福祉をまもる条例」を策定し、市民福祉の推進にあたってノーマライゼーションの考え方を明確に位置づけた。同条例制定以降、本市においては、福祉の対象を児童・高齢者・障害者等の限られた市民から、広く全ての市民に拡大しており、「市民福祉」という概念を基礎においている。また、平成元年には、北区に総合福祉ゾーン「しあわせの村」を整備し、障害者・高齢者と健常者のふれあいを通した福祉の向上を図っている。そして、「神戸市民の福祉をまもる条例」に基づき策定された、平成4年度を初年度とする10カ年計画「“こうべ”の市民福祉総合計画」に沿って、来るべき高齢社会へ対応するべく、ソフト・ハード両面における施策の推進を図ってきた。
しかしながら、平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、多くの市民の生命を奪っただけでなく、前述の概況にも記した通り、生活の基盤である家屋の喪失、家庭機能の低下、地域社会の崩壊など福祉の前提となる諸条件においても大きな被害をもたらした。特に、高齢者等援護を必要とする市民にその影響が大きく、できる限り早期にこれらの人々の生活の安定を図ることが最優先の課題となっている。
神戸市では、市全体の福祉を復興するプランとして、平成7年度に「市民福祉復興プラン」を策定し、ハード・ソフト両面にわたる施策を推進している。
そして、平成8年6月末には、被災者に高齢者や低所得者が多いことから、国の支援を得て、「神戸の住まい復興プラン」を策定し、比較的低家賃の公営住宅の供給増加と最低の場合に家賃6千円(月額)を実現した。また、被災者の暮らしの復興を図るべく、平成9年1月には、「神戸の生活再建支援プラン」を策定し、健康・福祉、生きがい就労、コミュニティ再生の具体策を展開しようとしている。
これらの取り組みは、震災からの復興という点で、他都市に比べて異なるか新たな形を目指す新生の取り組みとして、趣旨を同じにするものである。
そこで、本稿では、これらの取り組みを、「高齢者の社会参加促進のための方策」「高齢者に対する保健・福祉サービスの提供のあり方」「バリアフリーなまちづくりの促進策」という調査研究委員会の設定するテーマに基づいて、紹介するとともに、震災によって顕在化した「大都市共通の問題」についても報告させていただきたいと考えている。

 

 

 

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