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第一部 総論

 

はじめに
 
日本人の平均寿命をみると、昔では考えられなかったほど高齢まで生きていけるようになっている。特に女性の平均寿命は既に80歳を超えている。これは本来であれば喜ぶべきことであるが、出生率の低下とあいまって、我が国の人口の高齢化は世界でも類をみないほど急速に進展しており、それに伴う様々な問題も発生している。こうした問題に対処していくためには、高齢化に対応した介護等の社会システムやインフラストラクチャーの整備を短期間で行うとともに、市民の高齢化に対する意識や姿勢を育てていくことが必要であると考えられる。
我が国の高齢化は、農村部など地方において先行しているが、大都市地域においても確実に進行してきている。大都市においては、独居老人の割合の高さ、地域コミュニティの脆弱さなど特有の問題も存在することから、大都市地域における高齢化対策には農村部とは違ったアプローチも必要になると考えられる。このため、本研究会においては、大都市における高齢者福祉を向上させていくうえでどのような課題があるのか、また、今後その課題に対してどのような対応策を展開していくべきか等について検討を行うこととした。
本報告書の総論は、委員会及び現地調査における各委員の意見、議論等をもとに取りまとめたものである。しかしながら、一口に大都市といっても高齢化の状況や抱える問題点は様々であると考えられることから、本報告書においては、現状と問題点の把握と、問題点解決のため各団体が採り得る施策オプションの紹介にとどまらざるを得なかった。各団体においては、今後とも地域の実状や特性に合わせ、これらの施策オプションの効果的な組み合わせや実施などについて、より細かく検討していくことが求められよう。
 
第1章 大都市における高齢化の状況
 
1 長寿・高齢化の進展
 
(1)高齢化進展の要因
我が国においては、21世紀のはじめには人口の4人に1人が高齢者という高齢化社会の到来が予想されている。このような我が国における高齢化進展の原因は、大きく分けて、平均寿命の伸長と出生率の低下の二つがあげられる。
?平均寿命の伸長
戦後の経済成長は、国民の生活水準を向上させ、衛生水準の向上や医療技術の進歩と相まって我が国の平均寿命を大きく伸長させた。昭和22年(1947年)には男性約50歳、女性約54歳であった平均寿命が、平成6年(1994年)には

 

 

 

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