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?A背泳ぎの歴史

順天堂大学スポーツ健康科学部 鈴木大地

1. はじめに

背泳ぎは顔を水面上に出して泳ぐという特徴から現在、人命救助、休息、シンクロナイズドスイミングおよび水球など多様な目的で用いられている。
今世紀初頭、背泳ぎは本格的に競泳種目の仲間入りを果たし、その歴史を刻んできた。我が国では、これまで1932年ロサンゼルス五輪100mでの金銀銅独占の快挙を始め、数々の名誉を獲得してきた伝統の泳法である。近年でも、ソウル五輪での金メダル獲得や昨年のアトランタ五輪で男女ともに入賞を果たしている。
ここでは、背泳ぎを広義でとらえ「上を向いて泳ぐ・浮く」泳法・スタイルと定義し、話を進めることにする。永い水泳史の中で背泳ぎがどのような役割を担い、発展を遂げてきたのかを回顧していく。

2. 世界における背泳ぎの歴史

太古の昔から水泳は、遊び・避暑・補食・外敵および火事などを避けるため、日常生活と密接に分かわりながら行われてきた。
これまでの背泳ぎの歴史に関する資料の中で最も古いものは、紀元前5000年頃、リビアのナゴダ(Nagoda)でフロベニウス探検隊(The Frobenius Expedition)によって発見された絵だとされる(写真1)。その絵には、背泳ぎと平泳ぎをしている様子が描かれており、紀元前何千年もの昔から、人類と水泳とかかわり合っていたことを証明するものとなっている。
古代エジプトのラムセス?U世(Ramesses ?U)時代の『カディシュの戦い(紀元前1250年頃)』の膜様を描いたレリーフ(図1)にも背泳ぎに結びつく貴重な手がかりが残されている。そのレリーフには、負傷した戦士が救助のため、仰向けで引かれている姿を確認することができる。この時代にはすでに、体力を喪失した音あるいは、瀕死の

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写真1 J.P.Troup,A.P.Hollander,D.Strasse,S.W.Trappe,J.A.Trappe:Biomechanics and Medicine in Swimming.(1996)より

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図1 カデシュの戦いA.D.Touny.Steffen Wenig共著。滝口宏。伊藤順蔵共駅「古代エジプトのスポーツ」べースボールマガジン社(1978)刊より

 

 

 

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