日本財団 図書館


して民主主義の強化や地域の経済活動の活性化、広域行政の実施による行政の効率化、あるいはEU統合を見越した地方自治に関するEU基準への適合を目的として、従来のグミナの上位団体となる新たな自治体を設置し、地方に対する権限と財政の移管を進めることが現在議論されている。だが地方制度の改革に関しては連立与党の間で対立が生じたこともあり、現在のところ作業は中断されている(9)。特に97年には議会選挙が予定されていることもあり、地方自治に関する改革が早急に進展する可能性は当面小さいとみられている。

現在のところ有力な改革案となっているのは、次の2案である。

<1>従来の「支庁」に代わりかつての「郡(powiat)」を復活させ、その分県を現在の49から12もしくは17県程度に統合することで、地方制度を三段階制とする。そして新しく設置する郡は自治体として(一部には広域の県を自治体化するという見解もあるが)、公選評議会の設立と議会に対する条例制定権などの付与、現在の県や支庁の権限の大幅な移管、独自の財政基盤の付与などを実施する(10)。従来の細分化された県・支庁の体制では対応が難しい産業再編や失業、環境破壊、国際化などへの問題に対処し、かつ歴史的・社会的・経済的に以前から存在する地方間の結びつきを有効に生かすために広域団体の設置が必要であるいう主張が、この案の前提となっている。これには民主左派同盟の主流派をはじめ自由同盟、地方自治の専門家などが支持を与えているが、従来の県を基盤に影響力を保持している農民党や、県・郡が権限を拡大することで「国家」としての一体性が弱くなることを危惧する保守・教会系の勢力は、郡の設置には反対している。

<2>基本的な制度は現状のままで、現在の「県」に自治体としての地位と国家機関としての役割を兼ねさせることで、現在の二段階制を維持することとする。地域の再編よりも地域間格差を是正することが優先されるべきである、あるいは新しい地方単位の創設は権限分担を複雑にし行政の効率的な運営にはかえって望ましくないといった主張が、この案の根拠となっている。現在の県を軸に影響力や選挙基盤を保持している農民党がこの案を強く支持している他に、<1>案で廃止対象とされる県でもこの案を支持する声は強い。

現在の改革の議論は中央の政界における対立を反映している側面も強く、必ずしも「地方」の意向に沿った改革の議論がなされているとはいいがたい。加えて「地方」に居住する住民の側でも「自治」に対する意識が高いとはいえない、ないし地方団体に対する信頼が必ずしも高くはないという問題がある。例えば住民自身はグミナの政策に自分たちの意向は反映されていないという意識を有しているし(Cichocki and Cielecka 1995)(11)、また特に改革が一段落した90年以降は人々が「地域」よりも「個人」

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION