日本財団 図書館


自治法は、初めて「二重の従属」についてふれることがなかった。この点は重要であるが、ここではそのことを指摘するに留めておきたい。

直接に制定にかかわったスリーヴァによれば、地方自治の発展は、経済の発展と共同歩調をとるであろうし、新地方自治法の具体化のためにはさらに20を超す法令の整備が求められているという(25)。この過程はなお続行中である。

(4)地方自治、その性格と権限

さて、こうして制定された新地方自治法は、地方自治の本旨やその構造についてどのように定めているのであろうか。別添資料にその全訳を掲載してあるが、その主要な点についてかいつまんで整理しておこう(26)。

ア 地方自治の本旨

新地方自治法は、まずロシア連邦における地方自治を、ロシア連邦憲法によって承認され保証される、地方的意義を有する問題を直接にまたは地方自治機関をつうじて解決する、自主的で自己責任にもとづく住民の活動であり、住民の利益およびかれらの歴史的その他の地方的伝統に立脚するもので、ロシア連邦の憲法体制の原則のひとつであるとする。市民は、都市、農村およびその他の自治体で、住民投票、選挙およびその他の直接的意思表示によって、または選挙制もしくはその他の地方自治機関をつうじて地方自治にたいする権利を実現することになる。

市民は、情報公開を保障され、地方自治機関および地方公務員にアクセスし、人と市民の権利および自由に直接にかかわる文書および資料を閲覧し、地方自治機関の活動にかんする情報を入手する機会を保障されている。

さらに、地方自治権の制限は、禁止され、市民の直接的意思表示により採択された決定や地方自治機関および地方公務員の決定は、自治体の区域内のすべての企業、施設および団体、地方自治機関ならびに市民にとって義務的なものとされる。先の「ウドムルト」問題は、この点にまさにかかわっている。

自治体は、自治憲章の採択とその順守の監督、地方財産の管理、地方財政、地方予算の編成、承認および執行、その他の財政問題の解決、自治体の総合的な社会経済的発展、公有住宅フォンドの管理、住宅建設および社会文化建設、公立の就学前・基本普通および職業教育の施設、文化施設の管理、保健・公衆衛生施設の管理、社会秩序の維持、地域計画・建築・土地利用、地下資源、水資源等の規制、電気、ガス、暖房、燃料、水道および下水事業の組織、維持および発展、自治体の道路建設および地方道の維持、環境整備、交通事業・通信事業サービス、商業、公共給食および日常生活サービス、自治体財産である史跡および文化財の保存、就

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION