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衆議院の候補者は地方自治体の代表機関が推薦することになっている。州の代表機関の議員定数はおおむね同じだが、スヴェルドロフスク州の立法議会は49人で、そのうち28人が4年任期の州ドゥーマの議員で、衆議院には21人が2年任期で選ばれる。イルクーツクおよびオレンブルグ州の立法議会は45人、タムボフ州は47人である。一院制の州の代表機関の任期は一様に4年となっている。

執行機関の体系は、それぞれの知事がその長をつとめる。タムボフ、オレンブルグおよびノヴゴロドフ州では、執行機関の長を行政長官と呼んでいる。ロシア憲法では、連邦構成主体の国家権力機関の体系は、ロシア連邦の憲法体制の原則と連邦的法律の定める国家権力の立法機関および執行機関の組織の一般原則にもとづいて構成主体が独立して定めることになっているが、州の地位の変更に関連する場合と同様、こうした法律はまだない。多くの構成主体で96年秋まで選挙が実施されなかったこともあって、行政長官の選任方法はさまざまであった。たとえばオレンブルグ州憲章では、連邦構成主体の国家権力機関の構成の原則および手続にかんする法律が制定されるまでのあいだ、州行政長官は国の大統領がこれを任命し、解任するとしていた。タムボフ州やスヴェルドロフスク州では、知事は4年任期で普通、平等、直接の選挙権にもとづき秘密投票でこれを選挙すると定めていた。行政長官(知事)の年齢制限(30歳以上65歳以下など)や居住年数による制約(たとえば5年)を定めるところも多い。

州の司法権は、ロシア連邦の司法体系に含まれる裁判所がこれを行使する。州裁判所は、一般的権限をもつ裁判所と仲裁裁判所からなる。しかしスヴェルドロフスク州では、憲章の解釈、憲章とスヴェルドロフスク州の法律、立法会議の決定、州知事や政府、地方自治機関の法令の適合性について審理する憲章裁判所の設置が定められている。憲章裁判所は、州の国家権力機関と地方自治機関のあいだの権限をめぐる紛争も審理する。イルクーツク州では、州の憲章院と検査院が設置されている。イルクーツク州の場合はその判断は勧告的性格にとどまるが、スヴェルドロフスク州の憲章裁判所の決定は法的拘束力をもち、異議申立てや上訴ができないとしていて、興味深い。構成主体のうち、共和国であるタタルスタンやサハには、共和国の憲法裁判所がある。

ここに見るように、州や地方の統治構造は必ずしも一様ではなく、また安定的でもない。その理由のひとつは、地方における立法機関の形成のための選挙の実施が長引いたことにある。権力を独占しようとする地方の行政庁の側からの不当な動きがあったり、他方では立法機関の再建によって別の極端な歪みが生ずることもあったといわれている。タンボフとサラトフでは、州議会が採択した州憲章を州知事があっさりとその署名を拒否したこともあったという。最初に紹介したアルタイ地方の事例は、けっして例外的なことではなかったのである。

 

 

 

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