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後の町村合併までの時期の「村」である(3)。つまり、人口密度が希薄で村落が極端に散在したロシアにおいては、共産党政権の強引なキャンペーンにもかかわらず、町村合併は日本におけるような水準に達しなかったのである。しかも、ロシアにおいては、村合併が量的に日本の水準に達しなかったにもかかわらず、(これもまた村落の散在性ゆえ)伝統的な共同体を自治体内社会組織として保存し組み込むことができなかったために、村合併が伝統的共同体に与えた打撃は日本の町村合併よりもはるかに大きいという、踏んだり蹴ったりの結果に終わってしまった(4)。こうしたことから、こんにちにいたるもロシアの村管区の財政・人材基盤は脆弱であり、上からの指導・援助、とりわけ幹部・専門家(いわゆるカードル)の配員が不可欠である。まさにこのために、ロシアにおいては、日本では大正15年に廃止された郡の機構(ロシアでいえば「地区」機構)、つまり中二階構造がこんにちも残存しており、地方統治において重要な役割を果たしているのである。上に述べたことを図化すれば、図表2が得られる。

最後に、本節で述べた行政区画分けを前提とした現在のロシアの政府間関係を図表3に示す。

3 制度史概観

ロシア・ソ連の地方制度史を概観するために、2つのパラメーターを設定しよう。第1は、国と自治体(地方自治の概念が認められていない時代においては国家下部機構)の間の関係であり、第2は、自治体機構内部における立法機関と執行機関の間の関係である。

 

 

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