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は許されないと解される。したがって、首都地域を国の直轄地として組織した場合でも、それが地方公共団体ではないとしても、住民の意向反映の機会を制度的に設けないことになると、憲法の地方自治の保障の趣旨に反すると解すべきことになろう。
 ところで、そもそも法律は国会のみによって制定され、他の機関の関与は認められないので(憲法41条、国会単独立法の原則)、首都地域に妥当する法律の制定においても住民の意思の反映は担保されない。もちろん、諮問的な住民投票を実施するとか、住民によって選出された議決・執行機関(議会・長ないしそれに準ずる組織)の意向を事前に聴取するとかという事実上の意見反映の方法はありうるが、しかし、それは制度的なかたちでの住民の法律への関与ではない。首都地域の行政にとって住民の意思を制度的に反映させることは首都地域の地方行政にとっても不可欠であると解される。たとえば、首都地域の地方行政に関するある事項について、法律の定めと住民の意思とが対立した場合に、国は法律の制定を強行することが許されるかどうか、はなはだ疑わしいところである。法律に対する住民意思の反映の方法として、憲法95条を首都地域に準用するかたちで、首都地域に対して適用される法律について住民投票を行うことが考えられる。この方法によれば、首都地域に関する立法に対する住民の意思反映は制度的に確保される。しかし、住民投票によるのは、首都地域に関する立法のたびに住民投票を行うことが煩雑になりはしないか、首都地域の行政の円滑で効率的な実施を妨げることになるのではないか、という問題が生ずる。この点で、仮に「首都地域の行政に関する法律」というものを」般的に策定し、一方では、その法律の制定については住民投票を行い、他方で、以後はこの法律の執行というかたちで、行政を行っていくという方法も考えられる。しかし、この方法は、首都地域の行政の進め方について包括的な規定を設けることになる点で脱法的な方法であることは否めず、また、住民にとって切実な問題、たとえば、ゴミ問題や原発問題などが登場したときに、住民の意思を問わないままで実施することは許されないのではないかという困難につきあたる。首都地域の行政について包括的な法律を定めるという方法は、それを憲法違反とまではいうことはできないが、やはり、住民の意思表明の機会を制度的に調えておくことが、地方行政の理念に適合しよう。

(3)首都地域と条例制定権

 そもそも、首都地域の行政組織に条例制定権を認めないことが憲法上許されるか

 

 

 

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