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 第1項「…郡および市町村においては、国民は普通・直接・自由・平等および秘密の選挙に基づいてつくられている議会を有していなければならない。郡および市町村における選挙に際しては、ヨーロッパ共同体を構成するある国家の国籍を有している者も、ヨーロッパ共同体の法の基準にしたがって、選挙権および被選挙権を有する。市町村においては、市町村集会が選挙された団体に代わることができる。」
 第2項「市町村に対しては、法律の範囲内において、地域的共同体のすべての事項を、自己の責任において規律する権利が保障されていなければならない。市町村組合もまた、その法律上の任務領域の範囲内において、法律の基準にしたがって、自治権を有する。」
 第3項「連邦は州の憲法的秩序が基本権ならびに第1項および第2項の規定に適合することを保障する。」

(3)地方自治体の区域改革

 基本法第28条第2項にみるように、ドイツの基礎自治体は市町村であり、その上には市町村組合の郡が置かれている。市町村は、郡に所属する市町村と、郡に所属しない特別市(郡と同格)とに分けられる。
 第二次大戦後、西ドイツの諸州では大規模な区域改革が行なわれた。その目的は、自治体の行政・サービス能力の改善、都市の生活圏域に応じた行政区域の拡大などにあった。改革の始まった1968年に市町村は2万4,282、郡は425あったが、改革が一応終了した1978年には市町村は8,506、郡は237に減少した。特別市の数も135から87に減少した。この改革によって、一般的に市町村の行政能力が向上し、行政効率の向上とサービス供給の均等化が実現したことは確かである。しかし、自治体の区域の拡大により行政と市民の関係が従来に比べて疎遠になったこと、市民参加の機会が減少したことなどの問題が生じた。
 東西ドイツの統一後、新五州では郡の区域改革が進められ、1993年夏までに全189郡が87郡に統合された。その目的は、(1)市町村に対する監督官庁としての地位をはっきりさせること、(2)郡の財政力を強化して、郡の圏域全体で均衡のとれた都市基盤整備を実現することにあった。このように郡の区域改革は進んだが、市町村の区域改革はほとんど進まなかった。その背景には、前述の西ドイツにおける区域改革の経験に対する反省があった、それと同時に、地方自治の理念や経験と疎遠だった

 

 

 

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