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ある発展が図られている。こうした多極分散型の国土を支えているのが、連邦制であり、地方自治制度である。そこで、次にこの仕組みを概観することにしよう。

(2)連邦制と地方自治の保障

 連邦は、外交、国防、郵便・通信サービス、航空輸送、仕会保険、経済政策などの分野に関して権限をもつが、それ以外は州の権限とされている。基本法は、「国家的機能の行使および国家的任務は、この基本法が別段の定めをなさない限り、州の権限に属する」(第30条)と規定しているのである。州は、文化・教育、法的保護、社会扶助、警察、産業振興など内政一般に関して権限をもっており、地方自治の分野についても基本法第30条によって州の権限とされている。
 基本法は制定(1949年)当初、連邦と州の立法、行財政の権限をかなり厳格に分離し、対等の関係にある連邦政府と州政府が競争する「競争的連邦主義」の構造をとっていた。しかし、その後、主として「社会国家」(福祉国家)実現のための集権化が進行し、連邦制の構造は変化していった。1969年の基本法改正により、(1)大学の拡張・新設、(2)地域的経済構造の改善、(3)農業構造・沿岸保護の改善といった分野について、生活関係の改善のために連邦の協力が必要な場合、これを州と連邦の共同事務とすることになった。この共同事務の導入により完成された連邦と州の関係は「協調的連邦主義」と呼ばれる。これは、「協調」や「合意」を重視する戦後ドイツの政治・行政手法のひとつの結晶ともいえようが、これを通して連邦政府の州行政への干渉が制度化された点は見逃せない。
 この連邦制のもとで、各州の意見や利害は、連邦参議院を通じて連邦の立法・行政に反映される。連邦参議院は、連邦議会とともにドイツの国会を構成しており、その議員は、各州政府が大臣等のなかから任命する。各州の人口規模に応じて、全68議席が配分されている。
 前述のように、地方自治は基本的に州の所管事項であり、各州とも憲法でこれを保障している。その内容は、州によって異なり、少数民族の保護、男女同権、子供の保護、自治体の意見聴取権、環境保全などに関する規定を置いているかどうかは州によって異なっている。
 州憲法とならんで、連邦基本法第28条も地方自治を保障している。これは地方自治保障の大枠を定めて、州が地方自治を侵害しないように保障する趣旨である。

 

 

 

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