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選者のうち、3分の1を市議会と区議会との兼務議員とし、残る3分の2を区議会の専任議員とする。つまり、区議会の上位当選者3分の1が市議会を構成するといってもよい。パリ議会の定数は、大都市法の規定により、従来の109人から163人に引き上げられた。
 区議会では、通常の市町村議会と同じく互選により区長および数名の助役を選出する。ほとんどの場合、多数派となった名簿のリーダーが区長に就任することも市町村と同様である。しかし、市議会独自の選挙は行われなくなったので、従来のように各名簿のリーダーを市長候補者とみなして有権者が票を投じる機会は失われたわけで、市長の選出は実質的にもやや住民から遠い間接選挙によるところとなった。
 区議会の役割は大きく二つに分けられる。一つは、市政を住民に近付けるための仲介者としての機能で、市への質問権、意見具申権、提案権などである。二つ目は、身近な公共施設の管理者としての権限で、保育園、体育館、文化施設などに関する決定権を与えられている。また、区内の住民団体との関係も重要で、各団体の代表者を組織した諮問委員会を設置するほか、代表者の区議会への参加が制度的に保障されている。
 区長は、市長から一定の権限の委任を受けるほか、一般の市町村長と同じように、国の機関として戸籍事務や選挙に関する事務を扱う。
 区には独自の収入はなく、財政的には市からの包括交付金に依存している。区を地方公共団体とみなすべきなのかどうか、区の法的性格については議論があるが、その自治権の内容は東京の特別区などと比較するとはるかに限定されたもので、一般の市町村同様の基礎的自治体とはいえない。しかし、住民との距離を縮めることを目的とした、狭域行政の主体として機能していると考えられよう。

3 国の行政機関の地方移転

 フランスは、昔から中央集権的な傾向の強い国とされている。経済的にも政治的にも、パリの存在は際立って大きく、「パリを制する者はフランスを制する」とさえいわれてきた。現在では、パリ市だけで約220万人、周辺市町村を合わせると1千万人近い人口を擁している。しかし、フランスには、首都そのもの、あるいは首都機能の相当部分の地方

 

 

 

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