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4 地域福祉における介護サービスの仕組みづくり

〜24時間ホームヘルプサービスの例〜

講師:(株)コムスン代表取締役社長 榎本憲一

(1)会社設立の端緒

私がコムスンを設立するに至ったそもそもの原因は、設立の前に老人病院の経営再建に携わったことだった。この病院は福岡で比較的有名な病院であったが、経営が悪く、地域の病院の中で孤立し、220床すべて老人患者という病院になっていった。地理的には、有利な条件であったが、老人病院化が進み、外来患者も50,60人となった。220床に対して外来が50,60人ということは、まず治癒による退院がない、死亡退院だけということを意味する。入院患者には腰痛症、本態性高血圧症といった、確かに治療が必要のような病名はついていたが、実際彼らはほとんど治療を必要としない、投薬も必要最小限しか行われていないような高齢者で、家族が面会に来ない、帰る家がない、身寄りがないといった事情を抱えて、長い間入院していた。家族のいる患者には、退院をして人生の最後を我が家で過ごすことを提案するが、帰りたいけれども、もう自分の部屋はない、子供たちがほとんどその部屋を使っているし、居場所がない、自分が帰っても、共稼ぎで面倒を見てくれる者がいない、というような返事ばかりで、全く社会的入院(その当時、社会的入院という言葉はなかったが)状態であった。その一方で医療費は、当時でも入院後2〜3年経過すれば最低水準になっていく仕組みであったため、病院の収入は少なく、経営は苦しかった。私は何でこのような状態になったか、また地域の人がどのような医療機関を望んでいるのか調査に取りかかった。職員の中には惰性で勤めていたり、高齢の職員も多かったが、幸運であったのは、当時まだ医学部にいた経営者の息子が、長野県にある佐久総合病院の若月先生の農村医学、地域医療のような医療ならやってみたいということで、経営が続けられることになったことである。私も、当時私設病院協会の事務局長をしていたが、経営に携わることになった。

 

 

 

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