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である。しかし福祉を充実させなければ将来の生産労働人口も確保できない。むしろ福祉も経済改革の一環として位置づけられるべきだろう。福祉を充実させる上では基礎自治体の役割が大きいが、日本では市町村がその役割を担うことが期待される。その意味で、市町村の福祉施策の充実は日本の将来を握るといっても過言ではない。

(2)なぜ、今、コミュナリセーリング(市町村化)か

ア 市町村への権限移譲の重要性

基礎自治体の福祉施策の充実は、地方分権なくして実現できない。今、我が国では国から県への権限移譲を中心とした議論が行なわれているが、私はここでコミュナリセーリング(市町村への権限移譲)こそ重要であることを主張したい。それは次のような理由からである。

1. 市民の意識や自治体の行政能力が高まるなど、多くの業務を市町村に任せられるまでに、地域社会が成熟してきた。

2. 保育、義務教育、医療などのサービスが全国どこでも受けられるようになり、中央指導によるナショナル・ミニマムの整備はある程度の達成をみた。これからは地域住民の二ーズに応じた様々なサービスが求められている。

3.高齢化の進展に伴い、福祉サービスの性格が、救済を必要とする一部の人々向けのものから、広く一般市民向けのものへと変わりつつある。

4. 特に都市部では、市民の行政に対する二ーズが、橋や道路の建設から、生活環境の整備、福祉の充実、まちづくりへといった分野に移ってきた。

5. 福祉サービスは基本的に需要と供給がその地域において完結しているので、市町村化が可能である。

6. 手続きの簡素化を含む行政の合理化が要請されている。

このような状況から、特に福祉の分野において、市町村に権限を移譲し、地域の実情に合ったきめ細かいサービスを提供していくことが求められていると考えられる。

 

 

 

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