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(2)平地、里地の自然の状況

平地、里地の自然は急速に我々のまわりから姿を消していっている。その様子をまず、山林と対比される平地林の減少に見てみよう。関東地方における山林と平地林を合算した森林面積全体では、統計上、1960年(昭和35年)〜90年(平成2年)の間に5.6%の減少にとどまっている。しかしながら、山林と平地林に分けてみると、山林については、同期間に1.2%減とほぼ横這いの状態が続いているのに対し、平地林については19.7%という大幅な減少となっている。特に、栃木県では33.2%、神奈川県では31.6%、東京都で29.8%と顕著に減少している。同期間の関東地方の一都六県の平地林の減少面積の合計は696kkm2となり、東京23区を上回る面積の平地林が失われたことになる。この減少を時期的、地域的に見てみると、神奈川県、東京都、埼玉県では1960年(昭和35年)〜70年(45年)の間に大幅な減少が見られるのに対し、千葉県、群馬県、栃木県については、1970年(45年)〜80年(55年)にかけての減少面積の

第3−2−1表 国土空間の自然的社会的特性

国土割合 人口割合 人口動態 自    然     の    特    徴 土地利用規制等の状況
自然公園 自環地域 保安林 鳥獣保護 都市計画 国有林
山地自然地域 35% 1% 高齢化30%減少化35% ・森林率80%以上

・地域に占める農耕地は5%、植林地は30%

・全国の自然林の70%が存在

・全国の生息確認地に対し、ツキノワグマは60%、カモシカは65%、ニホンジカは25%イノシシは35%を占める。

15%

(55%)

-

(90%)

40%

(65%)

15%

(35%)

5%

(5%)

50%

(70%)

里地自然地域 45 15 高齢化10%減少化10% ・地域に占める農耕地は2%以下、植林地は25%

・全国の二次林の50%、農耕地の55%が存在

・全国の生息確認地に対し、ツキノワグマは35%、カモシカは30%、ニホンジカは65%イノシシは55%を占める。

10%

(40%)

-

(10%)

15%

(30%)

15%

(45%)

25%

(40%)

15%

(28%)

平地自然地域 20 84 高齢化 -  減少化 - ・地域に占める自然林は2%以下、農耕地は45%、植林地は10%

・全国の市街地、造成地の80%が存在

・全国の生息確認地に対し、ツキノワグマは5%、カモシカは5%、ニホンジカは10%イノシシは10%を占める。

3%

(5%)

0 5%

(5%)

15%

(20%)

85%

(55%)

3%

(2%)

(注)1.以下の基準により山地自然、里地自然、平地自然として捉えられる地域を設定し、その特性を表したもの。

       山地自然:標準地域メッシュ(2次メッシュ、ほぼ1万ha)の人口密度が5千人未満かつ森林率80%以上の地域

       里地自然:山地自然地域及び平地自然地域以外の地域(人口密度5千〜3万人、又は人口密度5千人未満かつ森林率80%未満の土地)

       平地面積:標準地域メッシュ(2次メッシュ、ほぼ1万ha)の人口密度が3万人以上の地域

      2.国勢調査、国土数値情報、自然環境保全基礎調査等に基づき環境庁作成

      3.高齢化は老齢人口(昭和60年、65歳以上)割合が20%以上、減少化は昭和50年から60年までの人口変化率が-30%以下のメッシュの割合

      4.土地利用規制等の欄については、上段は当該地域類型内の指定等の割合、下段の(   )内は当該土地利用規制等の全体に占める割合。

      5.自然公園は、国立・国定公園。自環地域は、原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域。

割合が高く、茨城県では、1980年(55年)〜90年(平成2年)の減少割合が最も高くなっており、順次、都心から郊外に開発地域が拡大していった状況がうかがえる。

<中略>

さらに、地方の農村等における自然や農地についても、高齢化や過疎化の進行により、その管理主体が失われ、持続的な保全・管理が困難な状況となっている。大都市圏への人口、資本、情報の集中や農林業の展望の不透明さ等により、地方の農村地域においては人口の流出、高齢化、農林業等の産業の衰退等の間に悪循環が生じ、その中で耕作放棄地の割合も高まっている。耕作放棄の生態系への影響という点では、例えば水田の場合、耕作放棄に伴い一般に植生が変化し、次第に開水面積が小さくなることにより、カエル、ドジョウ、トンボ(ヤゴ)といった水生生物が生存できなくなり、食物連鎖を通じてそれらを補食する生物の生存も困難となる。

また、高齢化や人口減少の下で、農地や林野を菅理する人的、経済的な余裕がなくなっていることから、ゴルフ場等の開発の提案に対し、農地や林野を手放す誘因も高いものとなっている。これらの地域では、いわゆるバブル経済時には、地域振興の観点から大規模リゾート施設の整備が次々に進められ、適切な環境配慮がなされない場合には、自然環境への悪影響が懸念された。現在は、バブルの沈静化で一頃のような具体的な開発圧力自体は弱まっていると考えられるものの、農村地域における過疎化、高齢化、産業の衰退という社会状況に基本的な変化はなく、同地域の自然等に対する潜在的開発圧力は依然として高いものとなっている。

 

 

 

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