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った。
 災害時の通信手段の確保については全庁的な防災対策との整合性を取る必要があるが、外部との具体的な連絡手段については、携帯電話、衛星携帯電話、無線等の移動体通信や携帯型コンピュータを用いたパソコン通信、インターネットの電子メール等、複数の手段をメーカーや関連業者との間で設定しておくことが考えられる。

2−3 震災時の行動基準の作成

 阪神・淡路大震災では、自宅が被災しながらも安全を確認した後に登庁した職員が多く、比較的早期に通常の指揮系統の下で状況把握と復旧作業の準備に着手することができたものと考えられる。
 しかし、民間の例では意思決定責任者が連絡不能となり、現場の判断で復旧に当たらなければならなかったところもある。こうした場合に重要なのは、職員が順次集まってくる各段階で「意思決定権限をどのように委譲していくかをあらかじめ定めておくこと」だと考えられる。
 さらに、意思決定権限を円滑に行使するためには、どのような手順で事態に対処していくかをあらかじめ定めておくことが必要だと考えられる。
 また、特に情報システム部門は地方公共団体における情報管理の要であるため、要員や時間が限られた作業環境になることが想定される中で、どのシステムを優先して復旧していくかをあらかじめ定めておくことも重要な規準になるものと考えられる。
 この他、実際には全庁的な防災対策の中で検討されることになると考えられるが、復旧活動時の職員その他の衣食住の確保は被害が大きいほど必要度が高まるため、何らかの取り決めを行っておく必要があるものと考えられる。
 なお、震災時の対処の手順とシステムの優先度については、参考資料に阪神・淡路大震災における考察から構成した例を示した。

2−4 コンピュータシステムの股置手段の耐震性強化

 2−1のコンピュータシステムの周辺設備の耐震性強化とあいまって施される必要があるが、コンピュータ本体や磁気ディスク装置などの床固定や、コスト的には負担が大きくなるが三次元免震床の導入までも視点に入れた震動対策の見直しを図る必要があろう。
 また、震災後にホストコンピュータの中央処理装置などの特に重要な機器を低層階に移設した地方公共団体もあるように、揺れが大きいと考えられる高層階にシステムを設置している地方公共団体では、移設も含めた強化策を検討する必要があるものと考えられる。
 この他、LAN等の構内回線のケーブルに関する被害が少なかったことからも分かるように、建物の歪みによる断線を防ぐためにも各種ケーブル類はその長さに余裕を持たせた配線を心がける必要があろう。また、万一断線した場合でもネットワーク全体がダウンしないようにループ化や多重化を考慮すべきだと考えられる。

 

 

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