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1. まえがき

 

膨脹式救命いかだは、日本では実用化以来約40年の歴史を有し、この間、その品質、性能において多くの改善がはかられ、救助率の高い極めて有効な救命設備として認識され、多くの乗員の人命救助に貢献してきた。
しかし、救命いかだが海上で上下反転状態で膨脹した場合、乗組員は海水中に入り、これを使用状態に復正させる必要がある。特に、救命いかだが大型で海水温度が低い場合等の悪条件下では、いかだの復正に時間を要し、場合によっては一人で復正できない事態に陥ることも考えられる。
1994年9月バルト海で発生したROR0旅客船エストニア号の海難事故を契機として、いかだに上下両面使用または自己復正機能を持たせ、救命いかだの有効性をさらに向上させる必要があるとの提案がなされた。
これらの機能をもつ救命いかだは、外国には1,2あるが、その性能、信頼性、経済性等において情報不足で、検討する余地があると考えられる。国内においては、この種の救命いかだは皆無であり、IMO(国際海事機関)の動向等を考慮すると、これを早急に開発し、その有効性を確認する必要がある。
本調査研究は2年計画とし、本年度は自己復正型及び天幕付両面型のそれぞれの型式につき性能・試験基準案を整理・検討の後、異なる構造をもつ各種タイプの新型式救命いかだの試設計を行い、その中より性能、信頼性、経済性の面から総合的に優れていると思われるタイプのものを一つ選定し、試作した。最後に、試作品の自己復正試験等を実施し、復原性計算結果との比較等、その性能確認と改良点の検討を行った。

 

 

 

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