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III 点検と整備

1. いかだの整備にあたって

(1)整備技術者の心構え

 いかだの整備技術者は、船舶検査官に代って、いかだの検査を一任されているのであるから、常にいかだの持つ使命と使用される状況を想起して、細心の注意と旺盛な責任感を持ち、慎重に整備を行わなければならない。
 また、いかだの整備に加えて、積み付けに本船を訪れた場合は、乗組員にいかだの正しい使用法及び日常の保守点検について、適切な指導を行うことが重要である。
 さらに、平素からいかだに愛着を持って整備技術の向上に努めることは勿論であるが、新聞、テレビ等で船の遭難事故を知った場合は、直ちに自分が整備したいかだがどうであったか調査にあたる等の熱意がなくてはならない。

(2)作業の安全管理

 いかだの点検整備作業は、直接的な労働災害の少ない作業ではあるが、いかだの取り外し作業、運搬作業・積付作業等は、最も危険度の高い船上で行われ、労働環境のきびしい造船所の構内に出入することから、不測の事故を想定しておく必要がある。
 上記の作業は、人、物、場所の相関関係が複雑であり、その安全管理は容易ではない。
 例えば場所については、船舶の種類、大きさ、積付位置が千差万別であり、また海象、気象により船体が揺れたり、水をかぶったり、外界の変化の影響も大きい。また物についても軽重あり、大小あり、形状もまた一定しない。

 人について言えば、造船所の構内作業などでクレーン操作等との複合作業となり、他の作業員との協力関係が必要となる。

 このように人、物、場所の不特定な条件下で安全な作業をするためには、整備主任者は勿論現場にのぞむ直接監督者及び作業員のいかだに関する知識と安全作業に対する認識とが必要である。以下の基本的原理と原則を十分に理解して正確に実践することにより、整備作業場及び船上の作業を通じて、総べての災害と事故を防止するよう努めなければならない。

(3)安全作業の原則

 安全作業を進めるうえでの原則をいくつか記すと次のようになる。

(a)服装の選択

 いつも正しい服装をするように心がける。

(イ)作業服は作業に適したもので、からだにピッタリ合ったものを着る。

(ロ)ときどき洗たく、補修していつも清潔にしておく。

(ハ)はき物は、高い場所での作業、重い物を運搬する作業、また甲板上の漏れた場所での作業等があるから、ゲタ、サンダルなど脱げやすいものや、すべりやすい履物は使用しない。

(b)安全装具の使用

 保護具は自分自身を守るためのものであるから正しく使用するように心がける。

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