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(5)高血圧の薬

1. 平均寿命の延長に多大の貢献
日本人の平均寿命は世界一となったが、それに大きく貢献したのが血圧を下げる薬で、死亡率の高い脳卒中(脳出血と脳梗塞など)、や心筋梗塞などが、薬や食生活改善等によって血圧をコントロールできるようになったので急減したのである。
健康診断や家庭用の血圧測定器で自分の血圧を知ることが多くなったが、素人判断で、自分は高血圧だからといって薬で下げると、かえって危険なこともある。
2. 薬の前に生活・食事等の改善
世界保健機構(WHO)は、最大血圧160mm以上または最小血圧95mm以上の場合を、高血圧とするという基準を示している。これは一般的基準であって、全ての患者がこれにしたがって診断されているわけではない。また、高血圧と診断された人が必ずしも降圧剤を服用する必要はない。血圧は、塩分のとり過ぎ、肥満・喫煙・晩酌・ストレスの多い生活などでも上昇するから、まず日常の生活や食事を改善することが大切である。それでも高血圧がつづくようなら、降圧剤を飲むことになる。

5. 医師からもらう薬と、市販薬はどう違うか

(1)投薬される薬と市販薬はどう違うか

1. 対症療法と原因療法
薬を使う目的には、とりあえず不快な症状を軽くする対症療法と、病気の原因となるものを取り除く原因療法とがある。対症療法では、病気や医院で処方する医療用と、薬店や薬局で買える市販薬とに本質的に大きな違いはなく、それは市販薬も症状に合わせて調合されているからである。しかし、医師が診断して処方する薬は、現在あらわれている症状に対して集中的に効果があるので、即効性があるといえる。それに対して、市販薬は成分の上限が規定されているので、集中的な効果を期待しにくい。したがって、市販のかぜ薬を飲んでも高熱や鼻みずが止まらないのに・病院の薬でぴたりとおさまった、という例は少なくない。
2. 原因療法は医師による診断が前提
抗生物質や合成抗菌剤など、病気の原因を直接たたく薬は医師の処方がなければ買えない。対症療法とちがって原因療法は、病気を診断して原因をさぐることが前提だからである。市販薬の場合は、売る薬店にも、買う患者にも、病気の原因を調べる手だてが少ないため、原因療法に当たる薬は限られている。
3. 情報提供が不安を除く
医師の処方する薬は、製薬会社一問屋一病院薬局(医院薬局)一患者という流れをたどる。この時効能書きや使用上の注意といった薬に関する情報の多くは、医師や薬局止まりで、実際に服用する患者には提供されない。情報が少なければ、薬を与えられる患者に不安が生まれることにもなる。それに対して市販薬は、製薬会社一問屋一薬店・薬局一患者と流れ、薬のパッケージの中には、成分と作用、効能、使用法、使用上の注意などの「効能書き」が入っていて、患者に情報を提供している。
そこで、医師が薬処方する場合にも、患者に対して薬剤についての説明が行われることが大切である。いずれにしても、処方された薬剤について疑問や説明が必要と思ったら、医師や薬剤師に申し出て、きちんと説明してもらうことが必要である。
4. 古くなった薬は?
病院などでもらった薬を長期に保存しておいて、似たような症状が起こったら飲むというのは危険で、医師に処方してもらった薬は、そのときの症状に限るものと考え、のみ残したら保存せず捨てることである。市販薬には使用期限があるので、確認すること(使用期限が3年を超えるものは表示義務がない)。

 

 

 

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