日本財団 図書館


 

第二編 造船現図展開

1 はじめに

現図展開は、これまで熟達した技能として伝えられてきた。教科書や指導書など、この技能に触れた書物は多くあるが、典型的な、一般的な手法を「Know How」ノウハウの形又は「How To」ハウツウの手順として取上げており、そのことを記憶習熟したとしても応用が利きにくい内容になっている。
この現図展開の技能を、できるだけ体系的に捉えて、「Know Why」ノウホワイ:なぜなのか、理由の分かる形に書いてみたい。
そのような試みであることを、あらかじめことわっておく。
分かりにくいところは、どんどん指摘していただきたい。それにより変更や追加を行い、より良いものにして行こうと思う。
そもそもソフトウェアというもの、このようなテキストもそれに含まれるが、使い込むことで使いものになってゆく。そのような期待を込めて書下してみる。
1.1 展開とは
そもそも「展開」とは、なにを指す言葉だろうか。外板の構造図は、外板拡張図とか、外板展開図とか名称が付けられているが、この意味は、外板曲面を平面上に押しつぶして描いたということである。その図面から読取れるのは、外板の形状ではなく、外板のつながりや、その他の構造との関係である。地図に見る国や地域も、同じような意味であり、地球展開図と理解してよい。
地球儀に見る形と地図の形は、極点に近いほど異ってくる。外板展開図は、いずれ外板形状を示すものでないから、図面の縦(幅と深さ)と横(長さ)の縮尺が異なり、横を縦の半分にすることが普通に行われる。
では外板の形状を示す図形は、なんと呼ぶか。外板展開(図)である。外板構造図と紛らわしくなるから、図の字は省略している。
図とは一般に面の上に描いたもので、面とは一般に平面を言う。外板の形状を、材料である板から切出すには、平面の図形で与えなければならない。ここで地球儀の形状と、地図の形状との違いのような差異が発生することは容易に類推できる。ことわっておくが単に外板と呼ぶときは、船体前後部の曲面をなす外板を指しているものとする。
地球儀と地図で形状の差異が小さいのは、赤道附近の形状であるが、それぞれの外板の場合、曲面形状を最も少ない差異で平面上の形状にすることを、外板展開と言うのである。
ではこの最も差異が少ないということは、なんで分かるのか。差異は比較できる量として求まるのか。幾何学的には、いろんな定量化手法があろうが、ここでは追求しない。ここでの目的は造船についてであり、平面形状は曲面形状に加工されなければならない。この加工作業量の最も少ない場合を、最少差異の展開と捉えよう。つまり展開とは、撓鉄作業が最少になる平面形状を求めることとする。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION