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この時、動力計で模型プロペラの推力TM(kg)、トルクQM(kg・m)、回転数nM(1/sec)および模型船の速力VM(m/sec)を計測する。この自航試験を行うとき、模型船に装備される模型プロペラは、通常、試験水槽施設を所有する機関が持っている数多くのストック・プロペラの中より近似しているものを選び代用されることが多い。また、自航試験の際、実船の摩擦抵抗係数が模型船の場合より小さいので、試験の際には、この違いの分たけ摩擦抵抗をあらかじめ差し引いておく必要がある。
自航試験で計測した推力TM(kg)と抵抗試験で計測した模型船の抵抗から推力減少係数(t)が求められる。また、次項に述べるプロペラの単独性能と自航試験で模型船の後方で作動するプロペラの特性の比較から伴流係数(W)とプロペラ効率比(ηR)を求めることができる。
(3)模型プロペラのプロペラ単独試験(Open water test)
模型プロペラのみを水中で走行試験するものを、模型プロペラのプロペラ単独試験と言い、プロペラの単独性能を求める試験である。
前記の自航試験に用いられる模型プロペラについて、プロペラ動力計により、プロペラの毎秒回転数nMを一定にしたまま、前進速度VA(m/sec)を種々に変えて模型プロペラのスラストTM(kg)、トルクQM(kg・m)を測定する。或は前進速度を一定にして、プロペラの回転数を変化して同様の計測をする。このとき、試験時のレイノルズ数Rnp=(D2n)/νがある臨界の値以上ならば、実物のプロペラの単独性能を表わすものと考えてよいとされている。(この臨界レイノルズ数は、約5×105の値)
これらの測定値から、スラスト係数KT(=T/ρD4n2)、トルク係数KQ(=Q/ρD5n2)、プロペラ効率ηO(=T・VA/2πnQ)およびプロペラの前進係数J(=VA/nD)の諸値を計算して、第2章図2.4に示したようなプロペラの単独性能曲線を図示すると、すべての幾何学的相似のプロペラに使用することができる。実船の推進馬力の計算を行う場合、この試験結果を用いて、プロペラの単独効率ηOを求めることができる。

 

以上の諸試験によって、模型船の造波抵抗係数(CW)、形状影響係数(K)、剰余抵抗係数(CR)、自航要素(W、t、ηR)やプロペラの単独効率(ηO)がわかるから、これらのデーターを基に実船の有効馬力EHPや伝達馬力DHPなどの計算を行なって実船の推定馬力曲線が得られる。ただし、この場合船体の表面粗度修正量(△CF)や模型船・実船間の尺度影響による伴流係数の実船換算率、たとえば、(1−WS)/(1−WM)のような換算係数は水槽試験だけではわからないので、同じ水槽試験データーを用いても、その換算率の値のとり方次第で、その結果が異なってくる。

 

 

 

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