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要するにシリンダ当たりの回転力NE(t)は一定回転力N0と基本周波数f、=qe/(4π)(1/2)×(n/60)[Hz]のフーリエ級数すなわち、式(11)のようなfe,2fe,3fe……という周期のcosine形の変動成分の和となる。これらの変動成分はこのようにf、の整数借の振動数を持つわけであるが、この場合に限り毎秒当たりの回転数を基準にして1/2次、1次、r/2次と呼ぶ。

プロペラに伝えられて推進に寄与するのはこの定数2項成分N0であり、Z個のシリンダを持つこの機関ではZ・N0の回転力がプロペラを介して有効な推進仕事をする。クランク軸、中間軸、プロペラ軸は当然この回転力N0に応じた量だけねじれる。しかしそのねじれ角は大きいが一定しており時間的に変動はしない。このねじれは始めに述べた例において重りを吊した時の△Lに相当する量である。N0以外の成分、すなわちN(1/2)cos(1/2qet+α1/2)、N1cos(qet+α1)、N3/2cos(3/2・qet+α3/2)、……が軸にそれぞれの振動数qe/2,qe,3/2qe……の振動数の強制振動を誘起する。そしてそれぞれの強制振動のねじれ角Z・N0による定常ねじれ角に重なってクランク軸、中問軸、プロペラ軸などに生じる。しかし先に述べたように軸系の固有振動と共鳴状態に入らない限り、そのねじれ角は問題にならない。すなわち(s/2)次の回転力成分と軸系のr節の共振状態すなわち

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となる回転速度について詳細に検討すればよい。この速度を危険速度と呼ぶ。先に述べたように軸系の固有振動はいくつも存在するが問題になるのは比較的低い節数のもので、通常の中速機関では1節と2節を考慮すればよい。
高速機関の場合は4節、5節に対する危険速度が問題になることがある。軸系の固有振動数f、が判っていれば上の式(1功からr節(s/2)次の共振に対応する危険速度n
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と簡単に求まる。重要なのはこの危険速度におけるねじれ振動の振幅値である。それを求めるためにはまずこの危険速度の振動に対応する減衰効果である。これに対しては実用に供せられるような理論値は全くなく、適当な理論に経験による数値を与えて振幅計算を行う。さらにこの計算を行う場合にはN0の場合と同様シリンダ数がZ個あることを考慮せねばならない。N0の場合は単純にzN0とできたが変動成分はこれほど簡単にいかない。Z個のシリンダの効果はシリンダの点火順序に基づく各シリンダの回転力成分間の位相差ならびに問題としている固有振動のモードを考慮に入れたちょっと面倒なベクトル計算を行わなねばならない。こういう計算を行うとSの値がZの整数借となる回転成分との共振が大きな振幅を生じ易いことが判る。この場合を大危険速度MajorcriticalSpeed,それ以外を小危険速度MinorCriticalSpeedという。

 

 

 

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