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第5章 時差通勤等の施策推進についての提言

本調査研究においては、大阪圏において最も混雑の著しい大阪市営地下鉄御堂筋線を中心に、ピーク時の混雑緩和に向けた、時差通勤等の需要コントロール施策とその推進方策についての検討、さらに実験的なPR活動の実施とその効果の計測などを行った。
ここでは、これらの検討を踏まえて、今後の施策展開のあり方について提言する。

 

(現状認識)

?首都圏と異なる大阪圏の通勤混雑事情
大阪圏の通勤時の鉄道の混雑は、一部の列車を除いては、最混雑区間の混雑率も概ね180%以下であり、首都圏に比べると混雑区間もあまり長くない。また、大阪圏においては混雑の著しい路線が地下鉄御堂筋線とこれに接続する郊外鉄道にかなり偏っており、総じて混雑率が高い首都圏とは状況が相当異なっている。
しかしながら、混雑率が150%以上という状況では通勤の疲労や不快感が大きく、特に女性や子供・高齢者等にとっては肉体的にも過酷な状況であるなど、快適な状態とは言えない状況である。このように、大阪圏においても、郊外鉄道も含めて混雑緩和を図っていくことが重要な課題となっているが、首都圏とは通勤混雑の様相が異なるため、通勤者が混雑回避に向けて、具体的な行動を起こすように促していく斬新な対策を提起する必要がある。
?地下鉄御堂筋線への集中
大阪圏において最も混雑の著しい地下鉄御堂筋線への需要の集中は、並行する他の地下鉄路線に比べて、御堂筋線の利便性が圧倒的な優位性を持つことに起因している。すなわち、御堂筋線は都心主要部を縦断しており、他の路線に比べ、沿線の事業所密度の高さや梅田・なんばなどの都心主要ターミナルでの郊外鉄道との乗換利便性の高さ、さらに、ピーク需要に対応するために行われてきた運行本数の増加や増結によって、最も利便性の高い路線となっている。
このような状況において、通勤者は、毎日これらを利用するに際して、各自の状況に応じた合理的な判断の上で、利用する路線や乗車する列車を選択しており、地下鉄御堂筋線への集中はその結果なのである。
?地下鉄御堂筋線の輸送力増強は限界
地下鉄御堂筋線は混雑緩和のために輸送力の増強を続けてきたが、輸送力の増強→利便性の向上→需要の増加といった循環により利用圏域を拡げてきたということもできる。

 

 

 

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