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?制定法による規定
流通性書類は、一般に、個別の制定法によって規定されている。前述のように、流通性書類は基本的な法律原則に対するいくつかの例外事項を含んでいるために、英国およびドイツの法律では、このような措置は不可欠である。
現行の流通性書類は、長い変遷を経て創られたものである。すなわち、ある種の書類の機能に関連した新しい取引慣行の発展に伴って始まり、やがて、法理と判例法がこの新しい取引慣行を徐々に吸収する時代が訪れる。最後に、新しい流通性書類を規定する制定法が採択される。この時にはじめて、この新しい書類が正式に認められた流通性書類としての完全な地位を獲得したということができる。
一般に、MANDATEの研究対象となった法体系の国では、今でもこのようなプロセスが新しい流通性書類の確立方法として開かれているが、これに必要とされる時間が長すぎるので、実際的な方法とはいえない。新しい書類が法律で定められるまで、その正確な意味と機能について商業的に不安定な期間が長く続くことになるからである。ドイツ法では、新しい流通性書類はこれに適用される法律によってのみ創られるのである。
そこで、実際には、別の方法を採用する必要がある。すなわち、契約という手段によって、新しい流通性書類に要求される機能を確認し、これを達成するのである。このような方法で、合理的で商業的な確実性を備えた新しい流通性書類の等価物を確立することが可能となる。この概念が広まれば、やがて法の手続によって流通性書類としての地位を与えられることになり、この段階で契約による取決めが不要となる。
同様に、「電子式流通性書類」(electronic negotiable document)を創ることを目的とする本プロジェクトは、流通性書類の「電子的等価物」を創ることにその作業を制限しなければならない。商業的な確実性を提供するためには契約によるフレイムワークが不可欠であり、必要なセキュリティ問題に備えるには技術的な解決策が要求される。
(3)最終報告書の背景となる調査
MANDATEプロジェクトの最終報告書は、電子的環境において紙の書類を使用する環境での流通性の概念と同等の効果を得るための一般的な解決策を紹介するものである。MANDATEプロジェクトは、解決策を探し出すことに重点を置いて進められたものであり、単なる問題点の羅列を目的とするものではない。したがって、本最終報告書は、解決策に重点を置き、このような解決策に導いた詳細な調査事項については深く立ち入ることを意図的に避けている。これらの調査・研究の要約は、最終報告書に添付されている附属書に記載されている。
?流通性書類に関する調査
法律問題専門家の第1の作業は、3つの法体系における流通性書類関連法の原則について研究し、報告することであり、強行法規がどの程度このような電子的代替物の開発ある

 

 

 

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