日本財団 図書館


 

B. 裁判条項
1. 裁判による紛争解決
国際商事紛争を訴訟によって解決する場合、国際的または超国家的な訴訟手続も、そのための国際機関も存在しない。そこで、国際商取引の契約違反から生じた紛争を訴訟によって解決する場合、?何処の国の裁判所に訳を提起するか、?訳を提起する国が特定した後には、その国の何処の裁判所に訳を提起するかを考えなければならない。そして、?裁判所が特定した後には、その国の渉外民事訴訟手続法を知らなければならない。
日本の場合には、「民事訴訟法」、「外国裁判所の嘱託に因る共助法」、「民事訴訟手続に関する条約」(昭和45年条約6号)、「民事または商事に関する裁判上および裁判外の文書の外国における送達および告知に関する条約」(昭和45年条約7号)、「民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例に関する法律」(昭和45年法律115号)、「同規則」(昭和45年最高裁判所規則6号)等の適用を考えなければならない。この場合に、裁判管轄権、外国裁判所の行った判決の承認と執行、当事者の訴訟上の能力、訴訟手続等について、国内の訴訟事件と異なる問題が存在する。
2. 裁判管轄権
(1) 国際的裁判管轄権
現在、渉外事件固有の裁判機関が存在しないので、渉外事件の当事者は、何れかの国の裁判機関に訴えるほかない。したがって、国が異なることによって、裁判の内容が違うことがあるのはやむを得ない。例えば、英米の訴訟手続では、正式送達がなければ、裁判権を生じない。そこで、まず何処の国がその訴訟事件について裁判権を行使しうるか、または行使すべきかを定め、次に、その国のどの裁判所の担当とするかを決めなければならない。前者は国際的裁判管轄権(一般的管轄権)の問題であり、後者は国内的裁判管轄権の問題である。渉外的民事訴訟事件では、つねに国際的裁判管轄権について考慮しなければならない。
国際的裁判管轄権には二つの意味がある。一つは、何処の国の裁判所に訳を提起すべきか、また当該裁判所は訴訟事件に対して裁判権を行使することができるか否かということで、直接的一般管轄権と呼ばれている。わが国では、直接的一般管轄権について定めた明文の規定はない。他は、外国の裁判所の判決の承認と執行を求められた場合に、その判決

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION