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とは思いますが、それが、僅か1か月の入院で、退院間もない頃から、曲がりなりにもラジオも聞こえ、テレビも聞こえ、不十分ながら電話も使えているのはありがたいと考えているのです。私は頼まれて1週間に1回くらいループを付けにあちこち行くのですが、そのために音楽会にも時々行っております。要約筆記がなくとも講演や会議に自由に参加でき、また、必要な時には即座に反論もできるようになったのですから、まるで夢のようであると言えます。
 人工内耳は個人差が大きいと言われますように全員が心から満足している訳ではありません。が、特にここ1年くらいに手術された方々の成績は、私の知る限りでは全般的に非常に良いようで、大多数の方々は、次のように話しております。「自分の声が明瞭に聞こえ、環境音が分かるだけでも心が落ち着く」「まるで生き返った感じがする」「性格がすっかり変わり明るくなった」「一度にパァーツと花が咲いたようだ」これが一番多いですね。それから私の考えでは女の人は、15歳くらいは若返ったよう。「また働きに出たい」「これまではうつむいて生きてきたが、今では矢でも鉄砲でも持って来いという昂然とした感じである」ということ。
 人工内耳との関係で補聴器や磁気ループのことにも簡単に触れさせてもらいます。徳島では、高齢難聴者等の聞こえの確保を目的として、平成3年度から補聴器装用相談事業を行なっています。毎月一回、厚生相談所で、医師一人、相談所の職員二人、補聴器技術者二人、聾学校の補聴器専門家一人の合計6人でチームを組んでやっています。私の方が難聴者を紹介することが多いので、私も殆ど毎回出ています。ついでに言えば、この他に補聴器研究会というのもやっており、この中にも私は参加している。非常にレベルが高いです。この検査は補聴器特性試験装置、パソコン、補聴器  フイッテング支援システム(これは徳島県で開発したもの。今は全国で使われています)など多数の計器を駆使し、午後1時から4時30分までかけて、6人もの專門家が、僅か二人しかしない徹底的なフイッテング(補聴器装用相談)を行なっています。実はこのようなことは人工内耳にも必要だと考えております。事前事後の相談などにも協会として力を入れまして、補聴器装用者のリハビリテーションに万全を期しております。協会ではまた市町村や社協と連携し、高齢難聴者の聞こえの確保を主なる目的として県下の各地で「難聴者教室」などのリハビリテーション事業なども行なっております。
 人工内耳も補聴器も、それだけの単独では限界が多くて、一般社会ではあまり役立たないかも知れません。ここに、人工内耳や補聴器などの補聴装置の聞こえをカバーし、補う、磁気ループなどの補聴援助システムの必要性がある訳です。補聴援助システムを活用することによって、人工内耳や補聴器では拾い切れない音声をキャッチでき、また明瞭な音声で聞くことが可能である訳です。人工内耳も補聴器と同じであり、補聴援助システムの徹底的な活用とトコトン努力しようとする態度がなければ宝の持ち腐れになるだろうと私は考えます。
 徳島では、早くから公共施設にループや赤外線を敷設することに力を入れてきましたが、何時でも何処ででも難聴者の聞こえを確保できるように、個人用からホール用などの大きいのまで、各種の携帯用の磁気誘導ループの製作にも力を注いでおります。
 高齢の女性でもバッグに入れて持ち運べ、磁気ループのないホールなどでも誰もが簡単に使える「個人・小人数用ループ」や、赤外線と同じか、それ以上の音質で聞きたい方のために、これもバッグに入れて持ち運びできる個人・小人数用の「ワイヤード補聴システム」なども協会が製作し使っております。手にマイクを持つことなしに、各自が胸に付けたワイヤードタイピンマイクで耳の不自由を忘れておしゃべりを楽しめる「おしゃべりループ」というものも協会が作っております。一般社会の健聴者中心の会議などにも協会の会員が、臆することなく何時でも自由に参加できます  ように、ワイヤレスマイクが10本、ワイヤードマイクが10本の合計20本位のマイクが簡単に使える携帯用の「難聴者会議支援システム」とい

 

 

 

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