西井/それでは続きまして、基調講演に移ります。
お話して頂きますのは、関西学院大学教授ニノミヤ・アキイエ・ヘンリー様です。
ニノミヤ様はカナダのご出身で、神戸聖隷福祉事業団理事として社会福祉の第一線のお仕事をされるかたわら、関西学院大学総合政策学部教授と
して教壇にも立っておられます。障害者インターナショナルアジア太平洋地区アドバイザーを務めておられ、国際的にご活躍されています。
今日は「震災と高齢難聴者:安心して住めるまちづくり」と題しましてお話しをしていただきます。それではニノミヤ様よろしくお願いいたします。
ニノミヤ/今、ご紹介頂きました関西学院大学のニノミヤです。
今年の9月はカンボジアで障害者の組織づくりをずっとしておりました。それは戦争という大災害で、国が大きく破壊された中で、人々も破壊され、そして多くの障害を持つ人達が今生活しているので、世界中の団体が救援に入っております。
私達は特に地雷で足を無くした人達の組織づくりを中心に仕事をしましたけれども、この3年間の調査と仕事を終えたときに、一つの問題に直面いたしました。それは聴覚障害を持っている人達のことでした。
1975年から1979年、ポルボトの時代は学校が否定されましたので、その間に約75%の教師や学生が殺されたと報告されております。現在の識字率が、男性が45%、女性が20%、字の読める方が非常に少ない国です。教育の予算が7.6%で、開発途上国の平均の14.8%の約
半分しかまだないということです。私はずいぶん調査の中で聴覚障害の方にインタビューをいたしました。ほとんどの人が字が読めないのです。新聞も読めない、本も読めない、筆談も出来ない、そして手話があまり発展していないのです。
ですから聴覚障害の方々が、家庭だとか、地域だとか、社会の中で孤立しているということが分かりました。世の中で何が起きているのか、地域の中で何が起きているのかさっぱり分からない。話相手が欲しい、こういうことに気がつきまして、今私達は、クメール語、カンボジアの言葉の手話を何とか作ろうというプロジェクトをつい2か月前から始めました。そのためにフインランドの聴覚障害のリーダーに今カンボジアに行って頂いています。そして、タイランドの聴覚障害者の方々にも今カンボジアに行って頂いて、手話をどのようにして作るかということを考える仕事を始めてもらいました。
手話も非常にシンプルな手話しかない。そして地方によってみんな手話が違うので、一つの手話が出来るかどうかも分からない。でも今私達が分かったのは、聴覚障害をお持ちの方々が本当に社会から孤立して、友達が欲しい、そういう叫び声を聞いて日本に帰って参りました。ですから聞こえの保障というのは、人間が人間らしく生活する基本的な権利だということを本当に実感しております。
私達は、阪神淡路大震災で大変大きな被害を受けました。私自身も家がつぶれて1年間仮の家で生活をして、また今隼、神戸で住むことが出来るようになりました。私は最近障害ということを考える時に、障害は個性ではないかと思うようにな