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6.考察

6.1 研究成果

 

本研究は高密度輸送線区における旅客輸送の快適化を図るために、従来は比較的着目されていなかった乗客の流れに着目し、これを誘導・制御することより、乗降時間の短縮および列車遅延の防止を実現することが目的である。これはいわゆる輸送力の増強だけに頼るのではなく、輸送力と旅客需要の不均衡を極力少なくすることにより高密度輸送の快適化を推進しようとする新しい試みである。なお、乗降時の行動様式には個人差、地域差、さらには時間帯などの状況による差違があるため、乗客流の制御には大きな困難が伴うと考えられる。
そこで、まず実路線を対象として朝ラッシュ時間帯の乗降状況をVTRで撮影するとともに、映像データの分析、乗降行動のモデル化、映像データに基づく乗客流シュミレータの開発、シミュレーション実験による停車時分の増大防止効果の検証を実施した。以下に今年度の研究成果を総括する。
実路線における乗降実態の調査・分析より、以下のことが確認できた。

 

(1) 等時隔運転区間では等時隔化が達成されているが、一度発生した遅延は回復されることなくラッシュ時間帯は継続している。また、発着時隔は同じでも停車時分が計画値より最大30秒程度増加する場合があり、停車時分の均等化は達成されていない。

 

(2) 列車毎、車両毎の混雑度にはばらつきがあり、同様に列車毎、車両毎の乗車人数にもばらつきがある。混雑度の高い列車、車両に対して多くの乗車客が集中する事により、乗車所要時間が長くなり、駅停車時分の増大につながるケースが見られる。

 

 

 

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