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笹川陽平理事長が語る
「日本財団この10年の歩みと次世代へのメッセージ」
 
聞き手:鳥井啓一(日本財団参与)
 
組織の変容
鳥井
「1992年から2001年までの10年間を、日本財団の歩みということで総括して下さい。まさに20世紀の最後の10年間ということになります。世界史的に見ましても激動の10年間だったと思います。財団においては、笹川良一会長が亡くなられました。理事長はどのように総括されるか、お伺いしたいと思います。」
笹川
「この10年は世界的に変革の時期であったと同時に、私たちの財団にとっても大きな変革の時期であったと思います。そもそも日本財団という組織は、創設者笹川良一初代会長の非常な先見性によって、数十年先取りをしてこういう組織をつくられたと言えるのではないでしょうか。「世のため、人のため」に働く組織のあり方はどうあるべきか、という問題提起に答えられる、そういう組織でなければいけないということを、常々我々は心して仕事をしてきたわけです。
 役所主導の組織を、いかに民にするかという長い闘いの歴史でもありました。幸いにして、曽野綾子会長の指導のもと、一気に民の方へさらに加速されたと思います。特に、「日本船舶振興会」という堅い名前を、通称とは言え「日本(にっぽん)財団」という名前に変えられたことは、大きな意味合いがあったと思います。
 当初、この「日本(にっぽん)財団」という通称には多くの異論、反論がありました。他の候補も数十あったわけですが、私は「日本財団」という名前には非常に思い入れがありました。ワールドカップサッカーでも「日本(にっぽん)」という言葉が正しい日本語だというのがみんな分かってきて、最近では社会一般にも「日本財団」と言っていただけるようになりました。日本を代表する組織であるということで、「日本財団」という名のもとに、職員が誇りを持って働いているのではないかという気がしています。
 我々の仕事が、「世のため、人のため」、政治・思想・宗教・人種・国境を越えた人道活動を広く世界的な視野に立って実践することは、創設以来何ら変わりはありません。しかし、時代に適合した組織形態として、理事会に加え、評議員会を新たにつくりました。また、日本を代表する、錚々たる方々が「日本財団は存在意義があるんじゃないか。ひとつ支えてやろう」ということで、ボランティアで参加をいただいているというのは、大変心強いことです。
 組織改正は、かつての3名の常勤理事制を一気に5名の常務理事制に拡大し、執行体制の強化を図るとともに、円滑な業務の執行を確保するために、会長・理事長・5名の常務理事による執行理事会を設置しました。理事会、評議員会、執行理事会、さらに内部監査を強化する意味から、監事も2名から4名に増員し、監事会も設置しました。特に曽野会長の考えは、お預かりしているお金の重みというものを常に意識しなくてはいけないということで、コスト意識を職員にしっかり持たせたことです。同時に、金銭についての厳格な管理と、その使用方法を指導されてきました。このように、組織が非常に近代化されました。
 この財団は設立当初から、人道的な活動を哲学としてやってきておりますが、それを具体化して、どういう方向性をとるかは、日本財団の「活動指針七つの鍵」に明確にうたわれております。また、昨年新しいビルに移ったことも、日本財団がまさしく第二世代期に入ったことを示す象徴的なできごとです。
 曽野会長のもと日本財団は、徹底した情報公開、説明責任を、時代を先取りしてやってきました。特に広報面での努力は、この10年間を顧みますと、非常に画期的だったと思います。日本財団の存在意義への社会の認識も飛躍的に高まったのではないでしょうか。またそれだけに我々自身、責任の重さを痛感しながら、仕事をやっていかなければいけない、と思っています。」
 
活動指針「フィランソロピー実践のための七つの鍵」
(1) あまねく平等にではなく、優先順位を持って、深く、且つ、きめ細かく対応すること
(2) 前例にこだわることなく、新たな創造に取り組むこと
(3) 失敗を恐れずに速やかに行動すること
(4) 社会に対して常にオープンで透明であること
(5) 絶えず自らを評価し、自らを教育することを忘れてはならない
(6) 新しい変化の兆しをいち早く見つけて、それへの対応をすること
(7) 世界中に良き人脈を開拓すること
 
求められる職員像
鳥井
「組織改革、それから広報等による透明性といった器ができて、そこに働く職員の資質、あるいはものの考え方は、過去とこれまでの10年間と比べますと、やはり変わりましたか。」
笹川
「おそらく世界中のこのような公益法人の組織で、圧倒的に平均年齢が若いということが言えると思います。本来的には、こういう仕事は社会的な経験を様々な分野で踏んだ方々がなさるのがベストかもしれません。しかし、我々の財団は時代を先取りする、時代に敏感に反応するという意味で、経験も重要ですが、若い感覚ということも大変重要だと思っています。若い優秀な職員がこの10年間入ってきていますので、彼らに期待をするところは大変大きい。しかしながら、我々の仕事というのは、頭だけの仕事ではなく、現場が中心です。現場へ数多く足を運び、ニーズを敏感に捉えて、新しい事業を創造していくことを強く求めています。お金を使う難しさというものは、体験を通じなければなかなか理解できるものでもありません。単にお金を出すのではなくて、そこにハートがついていかなければいけないわけです。自分のハートをどのように表現できるか、また表現したものをプログラムの中に、あるいは援助活動の中に、どのように具体的に入れていくかは難しいことです。会長が、常日頃説いておられる「読書の重要性」も豊かな感性あるハートをもつためのものなのです。私は職員一人ひとりの人間性が問われる仕事だと思っています。職員に対する教育というのは私にも大きな責任があると思っています。」



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