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平成18年神審第12号
件名

水上オートバイ レ プレミアIII同乗者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成18年7月19日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(雲林院信行)

理事官
稲木秀邦

受審人
A 職名:レプレミアIII船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
同乗者が前頭部挫創

原因
高波に対する配慮不十分

裁決主文

 本件同乗者負傷は,高波に対する配慮が不十分で,船体動揺の軽減措置をとらなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年8月21日13時35分
 滋賀県彦根市松原水泳場沖合(琵琶湖東岸)
 (北緯35度17.5分 東経136度15.0分)

2 船舶の要目
船種船名 水上オートバイ レ プレミアIII
総トン数 0.1トン
登録長 2.66メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 112キロワット

3 事実の経過
 レ プレミアIIIは,最大搭載人員3人のFRP製水上オートバイで,平成16年2月交付の小型船舶操縦免許証(二級・5トン・特殊)を受有するA受審人が1人で乗り組み,水上オートバイに乗った経験のない女性1人を後部座席に乗せ,遊走の目的で,船首尾とも0.2メートルの喫水をもって,平成17年8月21日13時30分滋賀県米原市大字磯に所在する159.5メートル頂の寅ケ城三角点(以下「三角点」という。)から202度(真方位,以下同じ。)920メートルの地点を,仲間の水上オートバイ3隻とともに発進した。
 松原水泳場は,遊泳区域及び動力船乗入禁止区域が,樹脂杭に取り付けた浮標をロープで繋いで囲われ,水上オートバイ等の遊走できる水域が明確に区分されており,当日の湖上の波高は,波打ち際では20センチメートル(以下「センチ」という。)ほどであったが,沖に出るにしたがって50センチ程度に高くなっていた。
 A受審人は,午前中から水上オートバイで遊走を楽しんでいたので,波高の変化についてよく見知っており,沖に出ると波に叩かれ,縦揺れして船底に衝撃を感じたが,速力を下げると危険を感じるほどでもなく,これまで水上オートバイ同好の仲間同士で2人乗りをした経験から,時速30キロメートル程度の対地速力(以下「速力」という。)で走れば大丈夫だと思っていた。
 A受審人は,動力船乗入禁止区域の少し沖に出たところで数回旋回した後,沖に向かうよう針路を西方にとり,時速30から40キロメートルの速力で進行した。
 13時35分少し前A受審人は,右舷前方から波高1メートルほどの波が来襲するのを認めたものの,同乗者が水上オートバイに不慣れであったから,仲間同士で乗ったときのように安定性を保てず,船体動揺でバランスを崩して落水するおそれがあったが,十分に減速して波への進入角度を調整するなど船体動揺の軽減措置をとらないでいるうち,波に乗り上がるように左舷側に大きく傾き,13時35分三角点から225.5度1,200メートルの地点において,バランスを崩して2人とも落水し,同人の頭部と同乗者の前頭部が接触した。
 当時,天候は晴で風力3の南東風が吹き,付近水域には波高50センチの波のほかに,他艇が生じる航走波があった。
 その結果,レ プレミアIIIに損傷はなかったが,同乗者Bが,約10日間の通院加療を要する前頭部挫創を負った。

(海難の原因)
 本件同乗者負傷は,琵琶湖東岸の松原水泳場沖合において,高波に対する配慮が不十分で,十分に減速して波への進入角度を調整するなど船体動揺の軽減措置をとらなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,琵琶湖東岸の松原水泳場沖合において,水上オートバイに乗った経験のない同乗者1人を乗せて遊走する場合,同乗者が水上オートバイに不慣れであったから,高波による船体動揺によってバランスを崩して落水することのないよう,高波に対する配慮を行って,十分に減速して波への進入角度を調整するなど船体動揺の軽減措置をとるべき注意義務があった。
 しかるに,同人は,これまでに水上オートバイ同好の仲間同士で2人乗りをした経験から,原速力のままで大丈夫と思い,船体動揺の軽減措置をとらなかった職務上の過失により,高波に遭遇して同乗者ともども落水を招き,同乗者に前頭部挫創を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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