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平成17年那審第38号
件名

漁船第二共進丸機関損傷事件(簡易)

事件区分
機関損傷事件
言渡年月日
平成18年7月28日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(西林 眞)

理事官
上原 直

受審人
A 職名:第二共進丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
プロペラ脱落

原因
プロペラ周辺の点検不十分

裁決主文

 本件機関損傷は,船体整備のため上架した際,プロペラ周辺の点検が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年10月8日20時30分
 沖縄県慶伊瀬島西方沖合
 (北緯26度17.2分 東経127度31.3分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二共進丸
総トン数 3.5トン
登録長 8.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 121キロワット

3 事実の経過
 第二共進丸(以下「共進丸」という。)は,昭和49年4月に進水したFRP製漁船で,船体中央やや船尾寄りに操舵室,その甲板下に機関室をそれぞれ配置しており,同61年11月に主機及び軸系装置を換装し,主機として,B社が製造したS6F-MTK型と称するクラッチ式逆転減速機付のディーゼル機関を備えていた。
 また,軸系装置は,逆転減速機出力軸に連結した軸径50ミリメートル(mm)のステンレス鋼製プロペラ軸が,船尾管及びシャフトブラケットに支持され,同軸のテーパ部に,直径500mmのマンガン合金製3翼一体型プロペラをキーとともに嵌入し,ねじ径が32mmで左ねじのキャップ形状をしたプロペラナットにより固定したうえ,ねじ径12mmで右ねじの回り止めボルトを同ナット先端穴からプロペラ軸端にねじ込むようになっていた。
 A受審人は,大工を営む傍ら,一時期ボートを所有するなどして長年趣味として釣りを続けていたところ,平成11年8月に一級小型船舶操縦士免許を取得したのち,漁師に転身する目的で同17年7月に共進丸を購入して沖縄県浦添市の牧港漁港を定係地とし,水揚げ実績によって正組合員になるとの条件で漁業協同組合への加入を申請した。
 ところで,A受審人は,購入にあたって前船舶所有者の立ち会いのもと約1時間半の試運転を行ったのち,同月下旬に有料の台車を借りて共進丸を上架し,友人2人の協力を得て塗装などの船体整備を行ったが,まさかプロペラナットが緩むことはあるまいと思い,早く塗装を済ませることだけに気を使い,同ナット及び回り止めボルトの締付け状態を確認するなど,プロペラ周辺の点検を行わなかったので,経年の船体振動等の影響を受けたものか,回り止めボルトに緩みを生じて脱落するおそれのあることに気付かないまま整備を終えた。そして,翌8月中旬に日帰りで流し釣り漁を行ったのち,越えて10月8日に共進丸購入後2度目となる同漁を行うこととした。
 共進丸は,A受審人が単独で乗り組み,同乗者1人を乗せ,操業の目的で,船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,10時30分牧港漁港を発し,11時30分,同港西方のナガンヌ,神山及びクエフの3島からなる慶伊瀬島と,慶良間列島ハテ島との間の漁場に至り,東から波高約2メートルのうねりがある状況のもと,主機を停止して風潮に流されながら釣りを行ったのち,主機を始動して潮上りすることを繰り返しながら操業を続けていたところ,プロペラナットの回り止めボルトが脱落し,主機を後進にかけたときに同ナットの締付けが緩み始めた。
 こうして,共進丸は,昼間に釣果があったので日没後も引き続き操業を続けたのち,慶伊瀬島の3島に囲まれた海域に移動することにし,20時20分端島灯台から048度(真方位,以下同じ。)2.5海里の地点を発し,東からのうねりによる船体動揺を軽減するために主機の回転数を大きく増減させながら航行中,プロペラナットがさらに緩んで抜け落ち,20時30分端島灯台から060度3.3海里の地点において,プロペラが脱落して航行不能となった。
 当時,天候は晴で風力3の北東風が吹き,波高約2メートルの東からのうねりがあった。
 共進丸は,うねりに対して上下するだけで進んでいないことを認めたA受審人が,シーアンカーと錨を投入するとともに第十一管区海上保安本部に救助を要請し,翌9日早朝,慶伊瀬島の北西沖合で捜索中の巡視艇に発見され,来援した僚船によって牧港漁港に引きつけられ,のち中古のプロペラが取り付けられた。

(海難の原因)
 本件機関損傷は,船体整備のため上架した際,プロペラ周辺の点検が不十分で,プロペラナットの回り止めボルトに緩みを生じたまま運転が続けられ,航行中,同ボルトが抜け落ちるとともに同ナットの締付けが緩み,プロペラが脱落したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,中古船の共進丸を購入して船体整備のため上架した場合,プロペラナット及び回り止めボルトの締付け状態を確認するなど,プロペラ周辺の点検を行うべき注意義務があった。ところが,同人は,まさかプロペラナットが緩むことはあるまいと思い,早く塗装を済ませることだけに気を使い,プロペラ周辺の点検を行わなかった職務上の過失により,回り止めボルトに緩みを生じていることに気付かないまま運転を続け,航行中,同ボルトが抜け落ちるとともにプロペラナットの締付けが緩み,プロペラが脱落して航行不能となるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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