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平成18年広審第56号
件名

引船こんぴら乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年9月22日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(原 清澄)

副理事官
前田昭広

受審人
A 職名:こんぴら船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底中央部外板に凹損,推進器等に損傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年12月3日00時00分
 瀬戸内海下津井瀬戸松島西岸
 (北緯34度25.55分 東経133度48.85分)

2 船舶の要目
船種船名 引船こんぴら
総トン数 16トン
登録長 11.96メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 478キロワット

3 事実の経過
 こんぴらは,昭和62年12月に進水した,航行区域を限定沿海区域とする鋼製の引船兼押船で,平成17年11月に一級小型船舶操縦士免許の交付を受けたA受審人が1人で乗り組み,排気管修理の目的で,船首0.8メートル船尾2.2メートルの喫水をもって,平成17年12月2日23時00分岡山県水島港を発し,同県日生港に向かった。
 ところで,A受審人は,出港時から視界が良好であったことから,レーダーを始動させないまま,専ら肉眼で周囲の見張りを行い,船位を確認して操船に当たっていた。
 23時52分半A受審人は,下津井港一文字防波堤西灯台から174度(真方位,以下同じ。)1,050メートルの地点で,針路を087度に定め,機関を回転数毎分540にかけ,折からの潮流に乗じて9.0ノットの対地速力で,手動操舵により進行した。
 23時56分半A受審人は,久須見鼻灯標から271度1,430メートルのところで,下津井瀬戸大橋に達したとき,針路を106度に転じて続航し,23時58分少し過ぎ同灯標から265度1,020メートルの地点に至り,久須見鼻東方沖合に1隻の反航船を視認したので,同船と互いに左舷を対して航過しようと針路を132度に転じたところ,松島に向首する状況となった。
 その後,A受審人は,松島までの距離が280メートルとなり,同島に向首接近する状況となったが,反航船の動向に気をとられ,船位を確認しなかったので,このことに気付かず続航した。
 こうして,こんぴらは,A受審人が左舷前方の反航船に気をとられたまま進行中,00時00分わずか前船首至近に松島の島影を認め,急いで左舵一杯としたが,及ばず,翌3日00時00分久須見鼻灯標から235度750メートルの同島西岸に,原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の西風が吹き,潮候は下げ潮の初期で,付近海域には約3ノットの東流があった。
 乗揚の結果,船底中央部外板に凹損及び推進器などを損傷した。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,瀬戸内海下津井瀬戸を東行中,船位の確認が不十分で,松島西岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,瀬戸内海下津井瀬戸を東行する場合,松島に著しく接近することのないよう,船位を確認すべき注意義務があった。しかるに,同人は,反航船の動向に気をとられ,船位を確認しなかった職務上の過失により,松島西岸に向首進行して同岸への乗揚を招き,船底中央部外板に凹損を,及び推進器などに損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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