(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年2月11日05時08分
岡山県釜島北岸
(北緯34度25.5分 東経133度50.2分)
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第十八大福丸 |
総トン数 |
434トン |
全長 |
65.00メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
3 事実の経過
第十八大福丸(以下「大福丸」という。)は,昭和61年3月に進水した,航行区域を限定沿海区域とする全通二層甲板船尾船橋型鋼製砂利石材運搬船で,A受審人ほか3人が乗り組み,浚渫したヘドロを積む目的で,船首0.8メートル船尾1.8メートルの喫水をもって,平成17年2月11日01時00分兵庫県家島港を発し,愛媛県伯方港に向かった。
ところで,大福丸は,船橋当直体制を船長,一等航海士及びA受審人の3人で,3時間交替の単独当直としており,本件時は,船長が出港操船を行ったのち,引き続いて船橋当直(以下「当直」という。)に就いていた。
04時35分少し前A受審人は,犬戻鼻灯標から173.5度(真方位,以下同じ。)880メートルの地点で船長と当直を交替し,針路を岡山県久須見鼻と松島との間に向首する259度に定め,機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力とし,自動操舵により進行した。
竪場島灯浮標の手前で,A受審人は,操舵室後方の海図台に行き,前路の水深を確かめるために同台に出してあった海図を一瞥し,前路の水深の数字を見誤って浅瀬があるものと錯覚し,同浅瀬を避けるため少しばかり釜島に寄せることにした。
05時02分少し過ぎA受審人は,久須見鼻灯標から084度1.7海里の地点で,自動操舵のつまみを回して左舵をとり,針路を243度に転じて続航した。
その後,A受審人は,釜島に接近する状況であることは認識していたが,天気が良くて視界も良好であったので,肉眼により同島への接近模様が把握できるものと思い,レーダーで同島との相対位置関係を確認するなどして船位の確認を十分に行わなかったので,釜島に著しく接近する状況であることに気付かないまま進行した。
05時06分A受審人は,久須見鼻灯標から094度1.1海里の地点に至り,釜島の北端に620メートルまで接近する状況となったものの,船位を確認していなかったので,依然このことに気付かないまま続航した。
こうして,05時08分わずか前大福丸は,A受審人が針路を原針路に戻しても良いころと思い,右舵をとって船首が久須見鼻に向いたとき,05時08分久須見鼻灯標から106度1,520メートルの釜島北岸に,原速力のまま乗り揚げた。
当時,天候は曇で風力4の西北西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期で,視界は良好であった。
乗揚の結果,左舷前部船底外板に亀裂を伴う凹損及び擦過傷を生じた。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,瀬戸内海を伯方島に向けて航行中,船位の確認が不十分で,岡山県釜島に著しく接近したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,瀬戸内海を伯方島に向けて航行中,海図を一瞥して前路の水深に不安を覚え,自船を少し釜島に寄せる場合,同島に著しく接近することのないよう,レーダーで同島との相対位置関係を確認するなどの船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,天気が良くて視界も良好であったので,肉眼により同島への接近模様が把握できるものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,釜島北岸に著しく接近したことに気付かないまま進行して同岸への乗揚を招き,左舷前部船底外板に亀裂を伴う凹損及び擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。