(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年1月1日10時30分
京都府舞鶴港東港内
(北緯35度30.0分 東経135度23.6分)
2 船舶の要目
船種船名 |
モーターボート イーグル |
登録長 |
7.86メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
110キロワット |
3 事実の経過
イーグルは,最大搭載人員7人のFRP製プレジャーモーターボートで,平成16年10月交付の小型船舶操縦免許証(二級・5トン)を受有するA受審人が1人で乗り組み,帰省中の息子や孫達計7人を乗せ,舞鶴港内を周遊する目的で,船首0.15メートル船尾1.40メートルの喫水をもって,平成17年1月1日10時00分舞鶴港西港第3区で,舞鶴市四所地区青井に所在するBマリーナを発し,同港の東港に向かった。
A受審人は,機関を適宜使用しながら戸島と牛渡鼻との間を通航し,念仏鼻から前浜埠頭のフェリーターミナル付近を周遊した後,松ケ埼から陸地沿いに北上して舞鶴引揚記念公園付近に向かうこととした。同人は,舞鶴港内の周遊をこれまでに十数回も経験しており,同水域各所の水路状況を十分に見知っていた。
10時27分半A受審人は,舞鶴港ミヨ埼灯台から122.5度(真方位,以下同じ。)1.0海里の地点に達したとき,舞鶴クレインブリッジを目標に針路を332度に定め,10.0ノットの対地速力としたが,操舵席の背後にいる孫達の方を見て,「岸壁の母」の話などを聞かせていたので,見張りが不十分となり,左舷船首方に認め得る舞鶴港長曽根浮標を視認しないまま,手動操舵で進行した。
ところで,舞鶴港長曽根浮標は緑円筒形の左舷標識で,同浮標の東側は,陸岸にかけて岩礁,浅礁の存在する水域であり,A受審人はこのことをよく知っていたが,孫達との話に夢中になり,ときどき前示橋の方を見たものの,同浮標の視認を行わなかった。
A受審人は,舞鶴港長曽根浮標の東側の水域に向かっていることに気付かないまま北上中,10時30分舞鶴港ミヨ埼灯台から105度1,240メートルの地点において,船底に衝撃を感じて機関を停止したところ,イーグルは,原針路原速力のまま,長曽根の浅礁に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風力2の西風が吹き,潮候は上げ潮の末期であった。
その結果,推進器リングダクト旋回軸を折損,舵板を曲損して航行不能となり,その後,風浪により陸岸に寄せられ,翌日クレーン車で陸揚げされて,のち修理された。
(海難の原因)
本件乗揚は,舞鶴港東港において,見張り不十分で,舞鶴港長曽根浮標を視認しないまま,長曽根の浅礁に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,舞鶴港東港において,東岸に沿って北上して舞鶴引揚記念公園付近に向かう場合,舞鶴港長曽根浮標の東側は,陸岸にかけて岩礁,浅礁の存在する水域であることをよく知っていたのであるから,その西側を通航するよう,早期に同浮標を視認するために見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,孫達との話に夢中になり,見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,舞鶴港長曽根浮標を視認しないまま長曽根の浅礁に向首進行して乗揚を招き,イーグルの推進器リングダクト旋回軸を折損,舵板を曲損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。