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平成18年広審第19号
件名

漁船第三福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年7月25日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(橋本 學)

副理事官
鎌倉保男

受審人
A 職名:第三福丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首部船底外板に破口,船長,同乗者2人が打撲傷

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は,水路調査が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年9月29日20時00分
 香川県三埼沖御幸岩
 (北緯34度15.7分 東経133度33.3分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船第三福丸
総トン数 4.4トン
登録長 13.05メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 382キロワット

3 事実の経過
 第三福丸(以下「福丸」という。)は,平成15年11月に進水したFRP製漁船で,平成16年6月に交付された一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人が1人で乗り組み,知人2人を乗せ,魚釣りの目的で,船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって,同17年9月29日19時00分岡山県大畠漁港を発し,香川県三埼南西方沖合0.5海里付近の釣り場へ向かった。
 19時57分A受審人は,予定していた釣り場に到着したものの,当該海域にはうねりがあり,とても釣りができるような状況ではなかったことから,引き返すことに決め,19時59分讃岐三埼灯台から209度(真方位,以下同じ。)570メートルの地点で,針路を000度に定め,機関を半速力前進の回転数毎分1,700にかけ,17.0ノットの対地速力で,法定灯火を表示して,手動操舵によって進行した。
 ところで,三埼の西方200メートル付近には,航行の支障となる御幸岩が存在することから,夜間や視程の悪いときに航行する船舶は,同岩に乗り揚げないよう,予め海図を調べるなりして,水路調査を十分に行うことが求められる海域であった。
 針路を定めたとき,A受審人は,御幸岩が正船首550メートルのところに位置することとなり,そのまま北上すると乗揚のおそれがある状況となったが,三埼沖合に初めて釣りに出たにもかかわらず,予め海図を調べるなりして,水路調査を十分に行わなかったので,当該状況となったことに気付かなかった。
 こうして,A受審人は,右舷方向の讃岐三埼灯台の灯火を注視しながら続航中,20時00分わずか前作動させていたGPS画面に小さな岩のようなものを認めたが,どうすることもできず,20時00分讃岐三埼灯台から276度280メートルの地点において,福丸は,原針路,原速力のまま,御幸岩に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力2の南東風が吹き,潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果,船首部船底外板に破口を生じるとともに,A受審人及び同乗者2人が打撲傷を負った。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,香川県三埼沖合において,魚釣りをする際,水路調査が不十分で,同埼西方の御幸岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,香川県三埼沖合において,魚釣りをする場合,当該海域に釣りに出るのは初めてであったことから,航行の支障となる御幸岩に乗り揚げないよう,予め海図を調べるなりして,水路調査を十分に行うべき注意義務があった。ところが,同人は,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,御幸岩の位置を正確に把握しないまま,同岩に向首進行して乗揚を招き,船首部船底外板に破口を生じさせるとともに,自らと同乗者2人に打撲傷を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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