(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成16年7月19日14時30分
福岡県福津市曽根ノ鼻南東方沖合
(北緯33度46.4分 東経130度28.2分)
2 船舶の要目
船種船名 |
水上オートバイ サブリナ |
水上オートバイ プレステージ |
全長 |
2.70メートル |
2.70メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
電気点火機関 |
出力 |
55キロワット |
80キロワット |
3 事実の経過
サブリナ(以下「サ号」という。)は,平成16年7月に新規登録された,最大搭載人員3人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで,艇体前部に操縦ハンドル,その後方に跨乗式操縦席と同乗者用座席が設けられていた。
ところで,A受審人は,同13年7月福岡県福津市所在のマリンショップでサ号を購入のうえ,同所で保管し,同年8月に小型船舶操縦士の免許を取得したのち,同年9月からサ号に乗り始め,毎年5月から8月にかけて遊走していた。
A受審人は,船長としてサ号の同乗者用座席に1人で乗り,小学生の息子1人を操縦席に乗せて操縦ハンドルにつかまらせ,いずれも救命胴衣を着用し,自ら息子を抱えるようにして背後から手を伸ばし同ハンドルを握り,遊走の目的で,同16年7月19日12時00分津屋崎鼻灯台から127度(真方位,以下同じ。)1.4海里付近のマリンショップ前面の海浜を発進し,沖合に向けて遊走を開始した。
A受審人は,海岸線から150メートル(m)ばかり沖合で,南北1,000mの距離を海岸線に沿って右回りに周遊し,14時28分半津屋崎鼻灯台から121度1.2海里の地点において,針路を180度に定め,毎時20キロメートルの速力(対地速力,以下同じ。)で進行した。
定針したとき,A受審人は,左舷船首1度500mのところに,プレステージ(以下「プ号」という。)が艇首を見せて停留しているのを視認したが,そのまま続航してもプ号を左舷側に10m離して無難に航過できるものと思い,同艇と接触することとならないよう,プ号との安全な艇間距離を保つことなく,同じ針路で続航した。
14時30分わずか前A受審人は,プ号を左舷船首35度17mに見るようになったとき沖合からの少し高まった波に出会い,操縦ハンドルが左にとられ,左旋回して同艇に向かって進行し,14時30分津屋崎鼻灯台から128度2,500mの地点において,サ号は,艇首が090度を向いたとき,原速力のまま,プ号の左舷中央部に直角に衝突した。
当時,天候は晴で風力2の南南西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期にあたり,視界は良好であった。
また,プ号は,平成14年8月に新規登録された,最大搭載人員3人のウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで,艇体前部に操縦ハンドル,その後方に跨乗式操縦席と同乗者用座席が設けられていた。
プ号は,四級小型船舶操縦士免状を受有するB船長が1人で乗り,C船舶所有者を同乗者用座席に乗せ,いずれも救命胴衣を着用し,遊走の目的で,平成16年7月19日10時00分福岡県宗像市神湊漁港を発進し,前示の海岸沖合に向かった。
B船長は,14時27分前示衝突地点に至って機関を停止し艇首を000度に向けて停留中,14時30分直前左舷正横5mのところにサ号の艇首を見たが,どうすることもできず,前示のとおり衝突した。
衝突の結果,サ号は,艇首部に擦過傷を,プ号は,左舷中央部に割損をそれぞれ生じた。
(海難の原因)
本件衝突は,福岡県福津市曽根ノ鼻南東方沖合において,遊走中のサ号が,停留中のプ号との安全な艇間距離を保たなかったことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,福津市曽根ノ鼻南東方沖合において遊走中,正船首方に停留しているプ号を視認した場合,同艇と接触することとならないよう,プ号との安全な艇間距離を保つべき注意義務があった。しかるに,同人は,同じ針路で続航してもプ号を左舷側に10m離して無難に航過できるものと思い,安全な艇間距離を保たなかった職務上の過失により,沖合からの少し高まった波に出会い,操縦ハンドルが左にとられ,左旋回してプ号に向かって進行して衝突を招き,サ号の艇首部に擦過傷を,プ号の左舷中央部に割損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。