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平成18年神審第58号
件名

監視船第二かだはやてモーターボート チャッピー21衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年8月8日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

副理事官
天河 宏

受審人
A 職名:第二かだはやて船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:チャッピー21船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
第二かだはやて・・・船首部に擦過傷
チャッピー21・・・左舷船尾外板に亀裂を伴う損傷 船長が左肩と左手に打撲

原因
第二かだはやて・・・見張り不十分, 船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
チャッピー21・・・見張り不十分,警告信号不履行,船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は,第二かだはやてが,見張り不十分で,前路で漂泊中のチャッピー21を避けなかったことによって発生したが,チャッピー21が,見張り不十分で,警告信号を行わず,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成18年1月22日13時00分
 和歌山県加太漁港西方沖合
 (北緯34度15.8分 東経135度01.5分)

2 船舶の要目
船種船名 監視船第二かだはやて モーターボート チャッピー21
総トン数 6.6トン  
登録長 11.98メートル 6.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 330キロワット 114キロワット

3 事実の経過
 第二かだはやて(以下「カ号」という。)は,平成2年7月に進水した,全長が14メートルを超えるFRP製監視船で,昭和50年4月に一級小型船舶操縦士免許を取得して平成16年6月小型船舶操縦士(一級,特殊)に更新したA受審人ほか5人が乗り組み,漁場区域の監視の目的で,船首0.6メートル船尾1.3メートルの喫水をもって,平成18年1月22日07時00分和歌山県加太漁港を発し,同港西方の沖ノ島や地ノ島周辺に向かった。
 ところで,カ号による監視は,稚魚放流などを行っている漁業区域での密漁船の監視や釣船の魚礁からの移動などの協力依頼の広報が主で,輪番制で乗船した加太漁業協同組合員により行われていた。この広報は,本来は釣船に接近し,録音テープを使用して船外スピーカーで呼びかけるものであったが,本件発生時には再生装置が故障していたので,代わりに汽笛を鳴らしながら釣船の周辺を航走し,魚礁から移動するよう協力を求めるものであった。
 A受審人は,同日07時30分ごろ地ノ島の南方海域に至って,監視を開始した。その後,A受審人は,午前中,地ノ島と沖ノ島の南側を東西に数回往復して昼食を済ませたあと,沖ノ島北側に出てから再度沖ノ島南側に戻った12時30分ごろ,沖ノ島南西の魚礁付近に多数の釣船がいるのを認めたので,これらの周辺を協力依頼の広報を行いながら東西に航走した。
 その後も継続して広報のために釣船の周辺を航走することとして,12時58分A受審人は,田倉埼灯台から273度(真方位,以下同じ。)1.5海里の地点で,針路を255度に定め,10.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で,手動操舵により進行した。
 このとき,A受審人は,正船首方620メートルのところに船首を南東に向けたチャッピー21(以下「チ号」という。)が,漂泊していることを視認できる状況であったが,船首左舷方で南方に移動する数隻の釣船に気をとられ,前方の見張りを十分に行っていなかったので,チ号に衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず,チ号を避けることなく進行した。
 13時00分カ号は,田倉埼灯台から270度1.8海里の地点において,原針路,原速力のまま,その船首がチ号の左舷後部に前方から75度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風力3の北西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期で,視界は良好であった。
 また,チ号は,平成4年6月に進水した,モーターホーン装備のFRP製モーターボートで,平成16年2月に小型船舶操縦士(一級,5トン)の免許を取得したB受審人が1人で乗り組み,魚釣りの目的で,船首0.25メートル船尾0.80メートルの喫水をもって,同日10時00分大阪府淡輪漁港を発し,沖ノ島南方の釣場に向かった。
 B受審人は,10時40分ごろ沖ノ島南方の釣場に到着後,ポイントを変更しながら魚釣りを続け,12時30分前示衝突地点付近で停止した船外機を直ちに使用できる状態にして,船首を南東に向けて漂泊したまま右舷側から竿を出して魚釣りを再開した。
 12時58分B受審人は,船首を150度に向けて魚釣りをしているとき,左舷船首75度620メートルのところに,自船に向首して接近するカ号を視認できる状況であったが,魚釣りに集中して,周囲の見張りを十分に行っていなかったので,このことに気付かず,警告信号を行わず,船外機を始動して移動するなど衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続けるうち,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,カ号は船首部に擦過傷を生じ,チ号は左舷船尾外板に亀裂を伴う損傷を生じ,B受審人が左肩と左手に全治10日間の加療を要する打撲を負った。

(海難の原因)
 本件衝突は,和歌山県加太漁港西方沖合において,広報を行いながら航走中のカ号が,見張り不十分で,漂泊中のチ号を避けなかったことによって発生したが,チ号が,見張り不十分で,警告信号を行わず,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,和歌山県加太漁港西方沖合において,釣船に広報するためその周辺を航走する場合,前路で漂泊中のチ号を見落とすことのないよう,見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,船首左舷方で南方に移動する数隻の釣船に気をとられ,前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,漂泊中のチ号に気付かず,これを避けないまま進行して衝突を招き,チ号の左舷船尾外板に亀裂を伴う損傷を,自船の船首部に擦過傷をそれぞれ生じさせ,B受審人に全治10日間の左肩などの打撲を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は,和歌山県加太漁港西方沖合において,釣りの目的で漂泊する場合,接近するカ号を見落とさないよう,周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,魚釣りに集中して,周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,カ号の接近に気付かず,警告信号を行うことも,船外機を始動して移動するなど衝突を避けるための措置をとることもなく漂泊を続けて同船との衝突を招き,前示損傷等を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図





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