日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  施設等損傷事件一覧 >  事件





平成18年横審第5号
件名

貨物船海徳丸定置網損傷事件(簡易)

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成18年5月19日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(金城隆支)

理事官
小須田 敏

受審人
A 職名:海徳丸船長 海技免許:五級海技士(航海)

損害
海徳丸・・・損傷ない
定置網・・・漁網,胴張りロープなどに切損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件定置網損傷は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年3月24日17時30分
 三重県英虞湾
 (北緯34度16.7分 東経136度45.2分)

2 船舶の要目等
船種船名 貨物船海徳丸
総トン数 199トン
全長 55.82メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 海徳丸は,船尾船橋型の鋼製貨物船で,昭和55年現有海技免許を取得したA受審人ほか2人が乗り組み,空倉のまま,船首1.5メートル船尾2.7メートルの喫水をもって,平成17年3月24日12時00分愛知県三河港を発し,大阪港堺泉北区に向かった。
 A受審人は,布施田水道を航行し,同水道西口を出たのち,三木埼沖に向けて進行しているうち,風雨が強まったことから,英虞湾の中央部付近で投錨仮泊して天候の回復を待つこととした。
 17時03分A受審人は,御座埼灯台から161度(真方位,以下同じ。)2.5海里の地点に達したとき,針路を315度に定め,機関を全速力前進にかけて11.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵により進行した。
 17時11分半A受審人は,御座埼灯台から193度1.3海里の地点で,針路を345度に転じ,機関を半速力前進とし7.5ノットの速力で続航した。
 ところで,御座埼灯台から004.5度820メートルの地点を中心に,南北方向に幅約50メートル東西方向に長さ約150メートルの水域に定置網が敷設されており,その定置網周縁には1.5メートル間隔で多数の浮き玉が取り付けられ,夜間における存在を示すための標識灯が設けられていた。
 A受審人は,以前一度英虞湾で錨泊したことがあり,定置網が英虞湾奥に敷設されていることは知っていたが,御座岬北方沖近くに敷設されていることは知らなかった。
 A受審人は,これまで定置網の敷設場所に疑問があるときは,最寄りの海上保安部などに定置網の敷設状況を問い合わせるなどして,水路調査を行っていたが,英虞湾奥のほかには定置網は敷設されていないと思い,このことを行わなかった。
 17時21分A受審人は,御座埼灯台から264度1,100メートルの地点で,機関を微速力として5.5ノットの速力に減じ,針路を錨泊予定地点に向く051度に転じたところ,定置網に向くこととなった。
 A受審人は,折から強雨となり,視界も制限され,船橋窓ガラスのワイパーを作動させても前方が見づらく,レーダーでも定置網の浮き玉の識別ができない状況となったことから,定置網に向いていることに気づかないまま進行した。
 17時30分わずか前A受審人は,船首方至近のところに黒色の浮き玉列を認め,機関を後進にかけたが及ばず,17時30分御座埼灯台から004.5度820メートルの地点において,同じ針路,速力のまま定置網に乗り入れた。
 当時,天候は雨で風力5の南西風が吹き,潮候は下げ潮の初期で,視程は約80メートルであった。
 その結果,海徳丸に損傷はなく,定置網は漁網,胴張りロープなどに切損を生じたが,のち修理された。

(海難の原因)
 本件定置網損傷は,荒天避泊のため,三重県英虞湾の中央部に向かう際,水路調査が不十分で,御座岬北方沖に設置された定置網に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,荒天避泊のため,一度しか錨泊経験のない三重県英虞湾の中央部に向かう場合,定置網などに接近しないよう,最寄りの海上保安部などに定置網の敷設状況を問い合わせるなどして,水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,英虞湾奥のほかには定置網は敷設されていないと思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,御座岬北方沖に設置された定置網に向首進行して,同定置網に乗り入れ,漁網,胴張りロープなどに切損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION