(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年8月27日15時00分
滋賀県大津市の琵琶湖西岸
(北緯35度13.8分 東経135度57.8分)
2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 |
モーターボート マリーナII |
登録長 |
5.70メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
出力 |
84キロワット |
3 事実の経過
マリーナIIは,平成5年4月に進水し,船体中央右舷側に操縦席を備えた無蓋のFRP製モーターボートで,操縦席前面に船尾の船外機を操作する丸型ハンドル,回転計などのメーター類,船灯スイッチ類などが設置され,右舷側に船外機スタータースイッチとスロットルレバーが取り付けられており,平成17年7月に小型船舶操縦免許(二級・特殊)を取得したA受審人が1人で乗り組み,友人3人を同乗させ,それぞれ救命胴衣を着用し,ウェイクボードを楽しむ目的で,船首0.3メートル船尾0.5メートルの喫水をもって,平成17年8月27日13時00分滋賀県大津市の琵琶湖西岸にあるマリーナを発し,同市小松にある近江舞子中浜水泳場(以下「水泳場」という。)沖合に向かった。
A受審人は,同日14時ごろ目的地の水泳場沖合に達したが,風力3の北東風により,波が高くなっていたので,ウェイクボードを諦めて水泳場沖合での遊走を繰り返した。
14時55分A受審人は,滋賀県大津市雄松崎にある男松三角点から040度(真方位,以下同じ。)300メートルの地点で休憩するつもりで,機関をかけたままでスロットルレバーを中立とし,漂泊を開始して北東風により南西方に圧流されるままにしていた。このとき,同乗者3人はA受審人の後方で立ったまま会話をしており,この直前の遊走による飛沫で甲板上が濡れていたので,船が急発進したりすると,身体のバランスを崩して水中転落するおそれがあった。
15時00分わずか前船首が283度に向いていたとき,操縦席にいて前方を見ていたA受審人は,左舷前方至近に水泳場の安全ブイを認めたので,同ブイから離れて沖出ししようと考えて,同ブイをかわすことに気をとられ,立ち上がって会話をしていた同乗者に発進する旨の注意を与えた上でスロットルを徐々に上げるなど同乗者に対する安全配慮を十分に行わないまま,ハンドルを右舷にとったままスロットルレバーを前進半速の位置まで一気にもっていったので,マリーナIIは船尾を左舷に振りながら急発進した。
15時00分,マリーナIIの船首が285度に向いたとき,男松三角点から020度200メートルの地点において,左舷後方で立ち上がって話をしていた同乗者のうち2人は手摺などにつかまったが,1人が身体のバランスを崩して後部のパイプにつかまることができないまま後方から船外機の左舷側に水中転落すると同時に,船外機のプロペラが同人に接触した。
当時,天候は曇で風力3の北東風が吹き,視界は良好であった。
その結果,水中転落した同乗者が両膝下に切創を負った。
(海難の原因)
本件同乗者負傷は,琵琶湖西岸の水泳場東方沖合において,漂泊中同水泳場安全ブイから離れて沖出ししようとする際,後部甲板で立っていた同乗者に対する安全配慮が不十分で,ハンドルを右舷にとったまま急発進し,身体のバランスを崩した同乗者1人が水中転落して船外機のプロペラに接触したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,琵琶湖西岸の水泳場東方沖合において,漂泊中同水泳場安全ブイから離れて沖出しする場合,立ち上がって会話している同乗者が身体のバランスを崩して水中転落しないよう,発進する旨注意を与えた上でスロットルを徐々に上げるなど同乗者に対する安全配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,安全ブイに気をとられ,同乗者に対する安全配慮を十分に行わなかった職務上の過失により,ハンドルを右舷にとったまま急発進し,身体のバランスを崩した同乗者1人を船外機の左舷側に水中転落させ,船外機のプロペラが転落した同乗者に接触し,両膝下に切創を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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