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平成18年門審第23号
件名

貨物船第三十八芸予丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年6月28日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(小金沢重充)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:第三十八芸予丸船長 海技免許:三級海技士(航海)

損害
プロペラ4翼の曲損及び船底外板に擦過傷

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年12月20日07時46分
 関門港小倉区
 (北緯33度53.8分 東経130度53.8分)

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三十八芸予丸
総トン数 499トン
全長 69.11メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第三十八芸予丸(以下「芸予丸」という。)は,船尾船橋型の鋼製貨物船で,A受審人ほか4人が乗り組み,山土1,500トンを積載し,船首3.80メートル船尾4.60メートルの喫水をもって,平成17年12月20日07時30分関門港小倉区砂津泊地を発し,同港響新港区へ向かった。
 A受審人は,離岸操船に引き続き単独の船橋当直にあたり,07時43分半わずか過ぎ砂津防波堤灯台から200度(真方位,以下同じ。)150メートルの地点に達したとき,針路を砂津航路に向かう048度に定め,機関を半速力前進にかけ,8.0ノットの対地速力で,手動操舵により進行した。
 ところで,砂津航路は,砂津防波堤先端を航過した付近から北東方へ延びて関門航路と交わる幅140ないし230メートル長さ約1,200メートルの法定航路で,その北側に設置された砂津航路第2号灯浮標(以下,灯浮標の名称については「砂津航路」を省略する。),第4号灯浮標,第6号灯浮標及び砂津防波堤灯台により航路界が示されており,第6号灯浮標の外側北西方至近には浅所が存在し,2メートル等深線が砂津防波堤灯台から042度430メートル付近のところに直径約50メートルのほぼ円形で海図W1263に記載されていた。また,A受審人は,関門航路を数多く航行し,砂津航路も20回ぐらい航行した経験があったものの,同航路の途中から航路外へ出て同航路北方至近の海域を航行したことはなかった。
 07時44分少し過ぎA受審人は,砂津防波堤灯台から102度80メートルの地点に達したとき,左舷前方に関門航路を南東方へ航行中の船舶を認め,その後同船との海難を避けるために砂津航路によらないで,同航路の途中から航路外へ出ることにしたが,航路標識の近くであれば大丈夫と思い,浅所の存在有無について海図に当たるなどの水路調査を十分に行わなかったので,第6号灯浮標の北西方100メートルのところに前示浅所があることに気付かなかった。
 07時45分わずか過ぎ,A受審人は,砂津防波堤灯台から063度270メートルの地点で,航路外に向かう014度の針路に転じ,同じ速力で進行し,前示浅所に著しく接近する状況となって続航中,07時46分砂津防波堤灯台から042度430メートルの地点において,芸予丸は,原針路原速力のまま浅所に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の西風が吹き,視界は良好で,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,プロペラ4翼の曲損及び船底外板に擦過傷を生じ,来援したサルベージ船に引き下ろされ,のち修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,関門港において,砂津航路を航行中,同航路の途中から航路外へ出ようとする際,水路調査が不十分で,同航路北西方至近の浅所に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,関門港において,砂津航路を航行中,同航路の途中から航路外へ出ようとする場合,関門航路を航行する船舶との海難を避けるために砂津航路によらないで,初めて航行しようとする海域であるから,浅所の存在有無について海図に当たるなどの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,航路標識の近くであれば大丈夫と思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,浅所があることに気付かないまま,これに著しく接近して乗揚を招き,プロペラ4翼の曲損及び船底外板に擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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