(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年2月4日20時30分
山口県防府市野島南西方沖
(北緯33度55.7分 東経131度41.2分)
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第二幸栄丸 |
総トン数 |
4.92トン |
登録長 |
10.30メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
15 |
3 事実の経過
第二幸栄丸(以下「幸栄丸」という。)は,昭和55年6月に進水したFRP製漁船で,船体中央部の操舵室にレーダー,GPSプロッター及び魚群探知機等を備えており,A受審人(昭和51年9月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか1人が乗り組み,小型機船底引き網漁の目的で,船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,平成17年2月4日10時00分山口県宇部港を発し,同県徳山下松港沖の野島北方の漁場に向かい,13時00分同漁場に至って操業を開始した。
20時12分A受審人は,漁模様が思わしくなかったので,漁場を移動することとし,周防野島灯台から007度(真方位,以下同じ。)1.75海里の地点を発進し,野島南方に向かい,レーダーを0.5海里レンジで使用して,同島西岸沿いに,機関を全速力前進にかけ,8.5ノットの対地速力で,操舵室の床に座って,手動操舵により南下した。
ところで,幸栄丸は,円筒形リモコンの上面に付いた舵角ダイヤルを回して操舵するようになっており,手動,自動の操舵切替えもリモコンで行い,手動操舵中に舵角を0度にすると,その時点の船首方向に針路が設定されて自動操舵となり,同操舵中に舵角ダイヤルを回し舵角をとり始めると手動操舵に切り替わるようになっていた。
20時24分A受審人は,周防野島灯台から294度1,200メートルの地点で,野島南端のレーダー映像のみで見当をつけながら転針し,針路を168度に定めたところ,同島の南西方約0.5海里にあるオモゼ灯標(灯高8.6メートル,光達距離3海里,灯質群閃白光毎5秒に2閃光)に向首するようになった。
20時27分A受審人は,周防野島灯台から258度980メートルの地点に達したとき,オモゼ灯標が正船首800メートルのところとなり,同灯標に向首し接近する状況であったが,慣れた海域なので大丈夫と思い,同灯標の灯光を観察するなり,レーダーで同灯標との相対位置を確認するなりして船位の確認を十分に行っていなかったので,このことに気付かず,同じ針路,速力のまま進行した。
こうして,幸栄丸は,20時30分周防野島灯台から217度1,300メートルの地点において,原針路,原速力のままオモゼ灯標の基礎部に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風力3の北西風が吹き,視界は良好で,潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果,水線下の球状船首部に亀裂を伴う凹損を生じ,A受審人が5週間の入院加療を要する胸骨骨折を負った。
(海難の原因)
本件乗揚は,夜間,山口県野島南西方沖において,漁場移動のため南下中,船位の確認が不十分で,オモゼ灯標に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,夜間,山口県野島南西方沖において,漁場移動のため南下する場合,オモゼ灯標に接近しないよう,同灯標の灯光を観察するなり,レーダーで同灯標との相対位置を確認するなりして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,慣れた海域なので大丈夫と思い,同灯標の灯光を観察するなり,レーダーで同灯標との相対位置を確認するなりして船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,同灯標に向首進行して乗揚を招き,水線下の球状船首部に亀裂を伴う凹損を生じさせたほか,自らが5週間の入院加療を要する胸骨骨折を負うに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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