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平成17年広審第145号
件名

モーターボート第2新栄丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年6月20日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(原 清澄)

副理事官
前田昭広

受審人
A 職名:第2新栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
竜骨中央から船尾端にかけての船底外板に破口を伴う擦過傷

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は,針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年5月4日15時00分
 山口県八島西岸センガイ瀬
 (北緯33度45.02分 東経132度08.18分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボート第2新栄丸
総トン数 4.9トン
全長 14.12メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 46キロワット

3 事実の経過
 第2新栄丸(以下「新栄丸」という。)は,昭和59年9月に進水した,航行区域を限定沿海区域とするFRP製小型兼用船で,昭和57年6月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,同乗者7人を乗せ,釣りの目的で,船首0.07メートル船尾1.25メートルの喫水をもって,平成17年5月4日09時00分山口県上関漁港を発し,同県八島周辺の釣り場に向かった。
 09時39分半A受審人は,八島洲埼沖合の釣り場に至って漂泊し,かさごなどを目的とした流し釣りを始め,その後,同島の惣埼,盛鼻などの沖合を移動しながら釣りをし,鉾埼沖合まで周回したときに帰港する予定であったが,釣果が少なかったので,更に北方のセンガイ瀬付近で釣りを試みることとした。
 ところで,A受審人は,センガイ瀬が八島北部の西岸沖合約600メートルのところにある,東西に約40メートル離して水面上に顕出した2つの岩が存在する瀬であることは知っていたが,同瀬の状況はよく把握していなかった。
 14時36分A受審人は,八島港A1防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から233.5度(真方位,以下同じ。)1.1海里の鉾埼の沖合で,針路をセンガイ瀬の東側の岩(以下「B岩」という。)を左舷船首1度に見る017度,機関回転数を全速力前進より少し下げて8.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)とし,手動操舵で発進した。
 14時45分少し前A受審人は,B岩の南側75メートルばかりのところに達したとき,折からの北北東方に流れる潮流に船首を立てるため船首を205度に向け,機関を停止して漂泊し,再び釣りを始めた。
 15時00分少し前A受審人は,船首がほぼ西方を向いた態勢となったまま,防波堤灯台から346度1.2海里の地点まで圧流され,釣り場であるセンガイ瀬を離れたので,潮上りすることにしたが,同瀬の状況をよく把握していなかったのであるから,B岩を十分に離す適切な針路を選定することなく,右舷方に顕出しているB岩を50メートルばかり離しておけば大丈夫と思い,針路を再び205度に定め,機関を前進にかけて3.0ノットの速力として進行し,15時00分防波堤灯台から345度1.2海里の地点に達したとき,原針路,原速力のまま,センガイ瀬B岩の南東方に存在する暗岩に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力2の南南西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期で,付近海域には0.3ノットの北北東流があった。
 乗揚の結果,竜骨中央から船尾端にかけての船底外板に,破口を伴う擦過傷などを生じた。

(海難の原因)
 本件乗揚は,山口県八島北部の西岸沖合のセンガイ瀬付近で潮上りをする際,針路の選定が不適切で,同瀬に存在する暗岩に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,山口県八島北部の西岸沖合のセンガイ瀬付近で潮上りをする場合,同瀬の状況をよく把握していなかったのであるから,存在することが予想される暗岩に乗り揚げることのないよう,B岩を十分に離す適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに,同人は,同瀬の顕在するB岩を50メートルばかり離しておけば大丈夫と思い,B岩を十分に離す適切な針路を選定しなかった職務上の過失により,センガイ瀬B岩の南東方に存在する暗岩に向け進行して乗揚を招き,竜骨中央から船尾端にかけての船底外板に破口を伴う擦過傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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