(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成17年9月25日12時30分
和歌山県田倉埼北西岸
(北緯34度16.0分 東経135度03.5分)
2 船舶の要目
船種船名 |
モーターボート シーズー |
総トン数 |
16トン |
全長 |
14.57メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
272キロワット |
3 事実の経過
シーズーは,平成5年6月に第1回定期検査を受け,操舵室内にはレーダー及びGPSプロッタを備えた2機2軸の船内機を装備する最大とう載人員15人のFRP製モーターボートで,同12年5月に交付された一級小型船舶操縦士免状を受有するA受審人が免状が失効したまま1人で乗り組み,友人とその同僚の計5人を乗せ,船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,同17年9月25日11時25分和歌山県和歌山下津港を発し,友ケ島水道加太瀬戸経由で大阪港へ向けて帰途についた。
発航するにあたり,A受審人は,加太瀬戸南方約2海里の和歌山県田倉埼沖を通航する予定でいたので,海図W150A及びW1143を用意するとともに,田倉埼海岸から北西方へ約250メートル拡延した浅礁域があることを調べて確認していた。
A受審人は,操舵室上部に設けたフライングブリッジの操縦席に腰掛けて操縦に当たり,田倉埼西方沖に向けて北西進していたところ,北風が強くなってきたので北風を凌ぐため,11時46分雑賀埼灯台から266度(真方位,以下同じ。)1,500メートルの地点において,田倉埼南方に接近した後,同海岸に沿って航行することとし,針路を330度に定め,機関を半速力前進の機関回転数毎分1,900の9.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で進行した。
12時18分A受審人は,田倉埼灯台から128度1,300メートルの地点に達したとき,船位を確認しないまま田倉埼海岸から北西方に拡延する浅礁域に接近すると,浅礁に乗り揚げるおそれのある状況となったが,見通しの良いフライングブリッジの操縦席に座って見張りに当たり,陸岸との距離を目測すれば何とかなると思い,操舵室の操縦席に移ってレーダーを作動するか,GPSプロッタの位置を海図に当たるなどして船位を確認することなく,この状況に気付かず,機関回転数毎分800の5.0ノットの速力に減速し,針路を273度とし,その後,田倉埼海岸に沿って右回頭しながら進行した。
12時28分,A受審人は,田倉埼海岸から北西方に拡延する浅礁域に300メートルまで接近したが,田倉埼北西方の浅礁域に著しく接近していることに気付かないまま,船首をゆっくりと北から北北東に向け,同じ速力で続航中,12時30分田倉埼灯台から325度290メートルの地点において,シーズーは,船首が020度を向いたとき,ほぼ同速力で,浅礁に乗り揚げた。
当時,天候は晴で風力4の北風が吹き,潮候は上げ潮の中央期で,高さ約1メートルの波があった。
乗揚の結果,船首部及び船尾部船底にそれぞれ破口を生じ,推進器翼及び舵を曲損し,航行不能となった。
(海難の原因)
本件乗揚は,友ケ島水道加太瀬戸に向け,和歌山県田倉埼海岸をこれに沿って北上中,船位の確認が不十分で,田倉埼海岸北西方に拡延する浅礁へ向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,友ケ島水道加太瀬戸に向け,和歌山県田倉埼海岸をこれに沿って北上中,田倉埼海岸北西方に拡延する浅礁域を航行する場合,その浅礁の存在を知っていたのだから,浅礁に乗り揚げることのないよう,操舵室の操縦席に座ってレーダーを作動するか,GPSプロッタの位置を海図に当たるなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,見通しの良いフライングブリッジの操縦席に座って見張りに当たり,陸岸との距離を目測すれば何とかなるものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,浅礁に向かって進行していることに気付かず乗揚を招き,船首部及び船尾部船底に破口を,推進器翼及び舵に曲損を,それぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
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