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 海難審判庁採決録 >  2006年度(平成18年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成18年門審第8号
件名

漁船丸福丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年5月16日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(向山裕則)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:丸福丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底部全般に破口を伴う凹損,推進器翼の曲損等

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年7月23日00時50分
 長崎県壱岐島南西方原島
 (北緯33度43.1分 東経129度38.8分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船丸福丸
総トン数 4.99トン
登録長 10.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 84キロワット

3 事実の経過
 丸福丸は,昭和57年3月に進水し,一本釣り及びはえなわ等の漁業に従事するFRP製漁船で,昭和51年1月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が単独で乗り組み,いか釣り漁の目的で,船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって,平成17年7月23日00時20分長崎県郷ノ浦港を発し,同港の南西方約4海里の漁場に向かった。
 これより先,A受審人は,去る5月以来郷ノ浦港を基地としていたところ,約10日前から漁模様が良好で,夜間に操業し,帰港ののち,昼間に漁具の修理作業を行い,蒸し暑い船内に居住していたこともあって,夕食後3ないし4時間の睡眠をとるだけの生活が続いていたので,睡眠不足の慢性化及び疲労の蓄積した状況であったことから,出航前から眠気を感じていたものの,居眠りに陥ることはあるまいと思い,出漁を取り止めるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 こうして,A受審人は,郷ノ浦港の鎌埼及び中各防波堤間を航過したのち,00時33分郷ノ浦港鎌崎防波堤灯台から270度(真方位,以下同じ。)120メートルの地点において,機関を全速力前進にかけ,GPSプロッター画面を見て,原島と小机島のほぼ中間に向首する224度に針路を定め,自動操舵によって7.0ノットの対地速力で,当直用椅子に座って船橋当直していたところ,前示のように睡眠不足等の状態であったことから,その後いつしか居眠りに陥った。
 丸福丸は,折からの潮流によって3度右方に圧流され,原島南端部に向かったまま進行し,00時50分壱岐長島灯台から110度1,750メートルの同南端部に,原速力のまま,わずかに右転して乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風はほとんどなく,潮候は下げ潮の中央期で,付近海域には弱い西流があった。
 乗揚の結果,船底部全般に破口を伴う凹損,推進器翼の曲損等を生じ,自力で離礁したものの航行不能に陥り,長崎県水難救済会の所属艇によって曳航されて帰航したが,のち廃船となった。

(海難の原因)
 本件乗揚は,連日昼夜の操業等を続けている際,居眠り運航の防止措置が不十分で,長崎県郷ノ浦港を出航し,漁場に向けて南西進中,同港沖合の原島南端部に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,連日昼夜の操業等を続けて単独で出漁しようとする場合,睡眠不足等の状態で,眠気を感じていたから,居眠り運航とならないよう,出漁を取り止めるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,居眠りに陥ることはあるまいと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,長崎県郷ノ浦港を出航し,同港防波堤を航過してまもなく居眠りに陥り,原島の南端部に向かって進行して乗揚を招き,船底部全般に破口を伴う凹損,推進器翼の曲損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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