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平成18年横審第20号
件名

旅客船第27みこもと丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成18年5月25日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(村松雅史)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:第27みこもと丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
舵及び推進器に曲損,船尾船底外板に亀裂

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は,針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年6月24日13時55分
 静岡県神子元島南岸
 (北緯34度34.4分 東経138度56.6分)

2 船舶の要目
船種船名 旅客船第27みこもと丸
総トン数 14トン
登録長 13.03メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 401キロワット

3 事実の経過
 第27みこもと丸は,平成13年1月に進水した専ら静岡県下田港と同県神子元島間の瀬渡し業務に従事するFRP製旅客船で,同10年3月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み,釣客3人を乗せ,船首0.5メートル船尾1.8メートルの喫水をもって,平成17年6月24日13時00分静岡県下田港を発し,同県神子元島に向かった。
 A受審人は,13時30分神子元島北東岸の裏波止場と称する乗船場所に到着し,釣客3人を上陸させ,続いて収容予定の釣客など28人のうち,集合していた16人を収容し,指定した同所で待っていなかった残りの12人に集合するよう伝えるため,13時50分同島南岸の岩場に向かった。
 ところで,神子元島南東端とその南方沖合のかめ根との間の幅約100メートルの水路には暗岩が点在し,A受審人は,平成10年からほぼ毎日下田港と神子元島間の瀬渡し業務を行っていたので,これら暗岩の存在をよく承知しており,同水路を通航する場合,海面の色の変化でその位置を目視により確かめて避航しながら航行していた。
 A受審人は,操縦席に腰掛けて操舵に当たり,神子元島東岸に沿って南下し,13時55分少し前神子元島灯台から140度(真方位,以下同じ。)310メートルの地点に至り,針路を270度に定め,7.5ノットの対地速力として手動操舵により進行した。
 定針したとき,A受審人は,神子元島南東端とかめ根との間の水路を西進すると,折から太陽が前方にあって日光が海面に反射し,海面の色の識別が難しい状況となることが予想できたが,指定した前示乗船場所に集合しなかった釣客のことが気掛かりで,逆光とならないかめ根の沖側を迂回する針路を選定せず,暗岩の位置を確かめることができないまま続航した。
 こうして,A受審人は,暗岩に向首していることに気付かず,釣客のいる神子元島南岸に向け進行中,13時55分神子元島灯台から147度280メートルの地点において,第27みこもと丸は,原針路,原速力で,暗岩に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力3の西風が吹き,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,舵及び推進器を曲損し,船尾船底外板に亀裂を生じて浸水したが,自力離礁し,のちいずれも修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,神子元島南東方沖合において,陸岸に接近する際,針路の選定が不適切で,暗岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,神子元島南東方沖合において,釣客に同島北東岸の裏波止場と称する乗船場所へ集合するよう伝えるため,陸岸に接近する場合,同島南東端とその南方沖合のかめ根との間の水路には暗岩が点在するから,海面の色の変化で暗岩の位置を確認できるよう,逆光とならないかめ根の南方沖合を迂回する針路を選定すべき注意義務があった。しかるに,同人は,指定した前示乗船場所に集合しなかった釣客のことが気掛かりで,針路を適切に選定しなかった職務上の過失により,太陽に向かって西進し,逆光の海面反射のため,暗岩の位置を確かめることができず,暗岩に向首進行して乗揚を招き,舵及び推進器に曲損を,船尾船底外板に亀裂を生じて浸水させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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