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平成18年神審第33号
件名

油送船第十二昌和丸桟橋衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成18年6月28日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(加藤昌平)

理事官
稲木秀邦

受審人
A 職名:第十二昌和丸船長 海技免許:四級海技士(航海)

損害
第十二昌和丸・・・船首部に擦過傷
第11号桟橋・・・支持鋼材曲損等

原因
操船不適切(桟橋係留時)

裁決主文

 本件桟橋衝突は,桟橋係留時の操船が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年6月18日09時00分
 大阪港堺泉北区第4区
 (北緯34度33.2分 東経135度25.8分)

2 船舶の要目
船種船名 油送船第十二昌和丸
総トン数 99トン
全長 33.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 330キロワット

3 事実の経過
 第十二昌和丸(以下「昌和丸」という。)は,平成10年3月に進水した船尾船橋型鋼製油送船で,昭和52年10月に乙種一等航海士の海技免許を取得したA受審人ほか2人が乗り組み,重油積荷の目的で,船首1.5メートル船尾2.5メートルの喫水をもって,平成17年6月18日08時00分神戸港の錨地を発し,大阪港堺泉北区第4区にあるB社専用第11号桟橋(以下「11号桟橋」)という。)に向かった。
 ところで,昌和丸は,神戸港摩耶埠頭を基地とし,主に阪神間での重油輸送及び錨泊船に対する給油作業に従事し,その作業は,毎朝同基地を発して同日夕方帰着することを毎日繰り返すものであった。同船の甲板下には8個の貨物油タンクを有し,右舷側に積荷用マニホールドを設け,甲板上には船首楼及び船尾楼を,船尾楼の上層に船員室とさらに上層に操舵室を配し,操舵室内には,前部中央に舵輪を装備し,前面窓に接して設けた棚の中央部にマグネットコンパス,右舷側に主機遠隔操縦ハンドルを,左舷側にレーダーを備えていた。そして,海上公試運転計画書写によると,全速力前進で左舵一杯をとったときの旋回径は50メートルであった。
 また,11号桟橋は,大阪府石津港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から256度(真方位,以下同じ。)1,280メートルの地点を先端として,168度の法線方向にB社C工場に向けて約70メートルの長さで敷設されていた。そして,昌和丸が同桟橋に着桟するにあたっては,同桟橋西方200メートルの地点で針路を同桟橋中央部に向首する090度に定め,機関を調整しながら3.5ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で接近し,船首が同桟橋まで50メートルとなったところで左舵一杯をとり,同桟橋前面で回頭し安全な距離を隔ててほぼ平行となったところで行きあしを止めたのち,係留索を送るものであった。
 そして,A受審人は約20年間押船及び内航タンカーの船長職を経験したのち,平成17年4月D社に入社したときから昌和丸に乗船し,毎月5回ばかりB社で積荷役を行っており,11号桟橋への着桟には慣れていた。
 08時50分A受審人は,南防波堤灯台から256度1,500メートルの地点に至り,漂泊して着桟の指示を待ち,08時58分同地点で11号桟橋に向けて針路を090度に定め,乗組員を船首尾配置に就けて機関を調整しながら3.5ノットの速力で進行した。
 08時59分半A受審人は,昌和丸の船首端から11号桟橋まで50メートルとなる,南防波堤灯台から254.5度1,350メートルの地点に達したとき,同桟橋の法線方向と自船の針路及び旋回性能からして,左舵一杯をとらないと同桟橋前面で回頭し安全な距離を隔てて着桟することのできない状況であったが,距離を隔てずに桟橋前に進出しようと思い,左舵一杯をとらずに舵角を左舵20度として続航した。
 09時00分少し前A受審人は,いつものような回頭速度を得ることができず,ほとんど回頭しないまま同桟橋に接近することから衝突の危険を感じ,機関を全速力後進にかけたものの及ばず,09時00分南防波堤灯台から254度1,280メートルの地点において,昌和丸は082度に向首し1.0ノットの残存速力となったとき,その船首部が11号桟橋に86度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴で風力1の西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。衝突の結果,昌和丸は船首部に擦過傷を生じ,11号桟橋支持鋼材に曲損等を生じたが,のち修理された。

(海難の原因)
 本件桟橋衝突は,大阪港堺泉北区第4区において,11号桟橋に係留するために接近する際,操船が不適切で,十分な回頭力が得られず,桟橋に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,大阪港堺泉北区第4区において,11号桟橋に係留するために接近する場合,同桟橋の法線方向と自船の針路及び旋回性能からして,同桟橋前面で安全な距離を隔てて回頭することができるよう,船首から桟橋までの距離が50メートルとなったところで,左舵一杯をとるべき注意義務があった。しかしながら,同人は,距離を隔てずに桟橋前に進出しようと思い,左舵一杯をとらずに舵角20度として適切な操船を行わなかった職務上の過失により,十分な回頭力が得られず,同桟橋に向首したまま進行して衝突を招き,昌和丸の船首部に擦過傷を生じさせ,桟橋の支持鋼材に曲損等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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