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 (海難の事実) 
1 事件発生の年月日時刻及び場所 
 平成17年4月29日12時54分 
 愛媛県大島沖合のカメ礁 
 (北緯34度09.1分 東経133度05.7分) 
 
2 船舶の要目 
| 船種船名 | 
モーターボート朝風丸 | 
 
| 総トン数 | 
1.8トン | 
 
| 登録長 | 
7.60メートル | 
 
| 機関の種類 | 
ディーゼル機関 | 
 
| 出力 | 
102キロワット | 
 
 
 
 
3 事実の経過 
 朝風丸は,平成4年12月に進水したFRP製小型兼用船で,昭和61年8月に取得した四級小型船舶操縦士免許を所有するA受審人が1人で乗り組み,同乗者4人を乗せ,きす釣りの目的で,船首0.4メートル船尾0.9メートルの喫水をもって,平成17年4月29日08時10分愛媛県西条市の係留地を発し,4つの小島からなる同県四阪島周辺の釣り場に向かった。 
 A受審人は,明神島沖合の釣り場に至って釣りを始めたが,西風が強く,波も高くて釣れないので,カマギ島付近ならば風も弱く,海面も静かで釣れるものと判断し,同島北方沖合に移動したが,ここでも釣果が思わしくなかったので,九十九島東方沖合の釣り場に向かうことにした。 
 ところで,A受審人は,九十九島東方沖合の釣り場では年間20回ないし30回釣りを行っていたので,九十九島とその北東方に存在する横島のほぼ中間付近に,東西に並んだ2つの干出岩で構成するカメ礁が存在し,同礁東側の干出岩上にB組合が設置した灯標が存在することを知っていた。 
 12時48分少し過ぎA受審人は、大島の戸代山三角点(234メートル)(以下「三角点」という。)から083度(真方位,以下同じ。)1.13海里の地点を発進して九十九島東方沖合の釣り場に向かうこととし,針路を230度に定め,機関回転数を毎分2,400にかけて17.8ノットの対地速力で,大島東岸を手動操舵により進行した。 
 12時51分A受審人は,横島北端を左舷正横約80メートル離して航過し,12時53分三角点から178度1,410メートルの地点に達したとき,正船首550メートルのところに,カメ礁の灯標を視認でき,同灯標に向首進行する状況となったが,平素,同人は横島東方沖合を経由して九十九島沖合の釣り場に向かっており,大島と横島間の水域を航行することはほとんどなく,カメ礁に対する関心をほとんど持っていなかったので,カメ礁の存在を失念し,航行に差し支えるものは無いものと思い,前面の窓から陽光が入っていくぶん眩しかったこともあってか,前路の見張りを十分に行わず,このことに気付かないまま続航した。 
 こうして,朝風丸は,A受審人が前路の灯標を避けないで進行中,12時54分三角点から192度1,800メートルの地点において,原針路,原速力のまま灯標に衝突した。 
 当時,天候は晴で風力3の西南西風が吹き,潮候は上げ潮の末期であった。 
 衝突の結果,朝風丸は右舷船首部外板を圧壊し,同乗者1人が左肋骨骨折及び胸部打撲,他の同乗者3人が下肢打撲などの負傷を負った。また,灯標は損傷し,新替された。 
 
(海難の原因) 
 本件灯標衝突は,愛媛県大島東岸を九十九島東方沖合の釣り場に向けて南下する際,見張り不十分で,カメ礁に設置された灯標を避けなかったことによって発生したものである。 
 
(受審人の所為) 
 A受審人は,愛媛県大島東岸を九十九島東方沖合の釣り場に向けて南下する場合,カメ礁に設置された灯標を見落とすことがないよう,前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。 
 しかるに,同人は,カメ礁の存在を失念し,航行に差し支えるものは無いものと思い,前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,同灯標に向首していることに気付かず,これを避けることなく進行して同灯標との衝突を招き,右舷船首部外板を圧壊させ,同乗者1人に左肋骨骨折及び胸部打撲を,他の同乗者3人に下肢打撲などを負わせ,灯標を損傷させるに至った。 
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 
 
 
参考図 
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